Family 137

最近、何が気に入らねぇのか知らねぇーけど
常に不機嫌で無愛想でつくしが何を言っても
返事さえしなくなった今さらながらの反抗期？で思春期真っ只中の翼が
俺のオフィスへと入ってきたのが１０分程前

平日の午前中

普段ならまだ学校に行っている時間に
何も言わずに俺のオフィスにはいっきて
軽く驚いている俺を尻目に一言も発しないまま来客用のソファーに寝転がると
携帯をいじってやがる


「お前、学校は？」

デスクで仕事をしていた俺は
PCから視線を外し翼に向けるが
奴は俺の方を向くわけでもなく
態勢に変化なしで返事すら返ってこない


「‥‥‥」


「ここに居ることお母さんは知ってんのか？」


「‥‥‥」

オイ！コラ！

こんだけ俺を無視出来んのってお前とつくしぐらいだぞ！


「オイ！返事ぐらいしろよ！」


「‥ん」


辛うじて返ってきたのはその一言だけで
翼はそれ以上は何も話すつもりはないみたいで
携帯をいじっているだけ


何が気に入らないのか‥

自分でも分かっているようで分からない


だけど常に不機嫌でイライラしてって感覚


俺自身にも身に覚えのある感情だから


今は何を聞いたって明確な答えは返ってこないだろうし
こいつがわざわざここに来たって事は
俺に何か言いたい事があったのだろう

だからと言ってせっついても
こいつの気持ちが固まらねぇと
何も話してこないだろうから

暫くほおっておく


気が向いたら話し始めんだろ


ソファーに寝転がったままの翼をそのままに
俺は再び仕事に集中し始めた


どれぐらいの時間が経ったのだろうか？

気がつけば翼がデスクの前に立っていた

「どうした？」


「ん‥腹減った」


時計を見れば１２時を少し過ぎたところ


「もう、昼か。
お前、なに食いたい？」


「なんでもいい」


「メープルからなんか持ってこさせるか？」


「いや、朝も食えなかったから
すぐ食べれる方がいい」


「朝食ってねぇーのは
お前が悪ぃーんだろーが？！」



「‥‥‥」


翼からの答えは返ってこない


つくしに似て朝は必ず食って出る翼

だけど今日は食い損ねていた

その原因は翼自身


朝から機嫌が悪く何度もつくしに起こされてやっと起きてきた翼

いつもより時間が遅くつくしも朝の忙しい時間帯にペースを崩されイライラしていた


不機嫌な翼にイライラするつくし


いつもなら俺はもう仕事に出掛けている時間帯だったが
今朝は少し余裕があり双子を幼稚舎に送っていく為
朝飯を終えた双子の着替えを手伝っていた


イライラと翼を急かすつくしの声が
朝から部屋に響いていて

急かされている翼はわざとその逆をいくようにダラダラとしていた


年ごろの息子に口煩く言ったところで
聞くわけねぇーだろ？

だから俺はそんな二人のやり取りを静観していた

普段ならとっくに家を出ている時間になっても
まだ朝飯も食わずダラダラモードの翼に
イライラがピークに達したつくしが
いい加減にしなさい！と怒鳴った瞬間

それまで返事もしなかった翼が


"うるせぇーババァ！"


と怒鳴り返した


動きの止まったつくしと怒鳴った瞬間、俺と目が合った翼


俺に怒られると思ったのだろう翼は
そのまま何も言わず出て行ってしまっていた


「あの後、大変だったんだぞ！」


「俺のせいじゃないしょ」


「お前だっつーの！」


プイっと出て行ってしまった


その姿を唖然と見送ったつくしは

翼の姿が見えなくなってから我に帰って


"何あれ？なんなの？！
どういうこと？！ねぇ？パパ？！"


"俺に聞くなって！
お前がガミガミ言い過ぎたんだろ？！"


"何それ？！あたしが悪いわけ？！
ねぇ？パパ？！あたしのせいなの？！"


"そうとは言ってねぇーだろ？！"


"言ってるじゃん！
言ってるのと同じじゃん！
なんなの？うるせぇーって？！
だったら言われる前に動けっつーの！
ババァって？！あたしはまだ３５だっつーの！
ババァとか言うな！"


"俺に言ってもしょーがねぇーだろ？！
本人に言えよ！"


"パパがビシっと言ってくれないからのが悪いんじゃないの？！"


"俺かよ？！"


"そう！パパが悪い！
だって！あの子！パパと同じ事言ってるじゃん！
うるせぇーババァ！なんて！
まんまパパでしょ！
あたしはそんな事言ったことないもん！"


"俺のせいにすんな！
とにかく時間だからそろそろ行くぞ！"


"もぅ！誤魔化さないでよ！"


とか言っていたつくし

なんでも俺のせいにすんな！っつーの！






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