Fighting！(仮) 6

ふいに視界に影が出来て顔を上げた瞬間
腕を引き上げられ強引に立ち上がらされた


「てめぇはちょっと目を離すとすぐに男とイチャイチャしやがって！
殺すぞ！コラ！」


頭上から降り注ぐ聞き慣れた声に
視線を上げると額に何本もの青筋が浮かべた彼が居て

その鋭い視線は私の隣に座っている又従兄弟に向けられていた


「おっつ！」


司の額に浮かぶ青筋に思わず仰け反る

「えっと‥ど、どうしたの？」


「お前の親戚だったら俺様にとっても親戚だろーが？！
だから俺様も出席してやる！」


叔母とはまた違った角度から斬り込んでくる上から目線に
どうして私の周りってこう上から目線ばっかりなんだろう？なんて‥


「偉そーに言うな！
あんた、また西田さんに無理言ったでしょ？！」

明日っからのハワイ旅行の為に
出発ギリギリまでスケジュールが真っ黒で忙しいはずなのに！

「無理なんて言ってねぇーよ！
西田も喜んでスケジュール空けてんだよ！」


「もぅ！とりあえず座って！
大人しくしててよ！」


私はなるべく小さな声で話してはいるんだけどね

司は声のトーンを全く落とそうとしないし
何より存在感だけは無駄にある男だから
周囲がザワザワし始めている


「し、支社長！」

「道明寺支社長！」

あちゃ～

バレちゃったじゃない‥


新郎側に座っていた会社関係の出席者の一人が立ち上がり
そう声を発した瞬間、新郎のお父様も気づかれたようで
慌ててこちらへと駆け寄って来られた


「道明寺支社長！本日は私共の愚息の為にわざわざ足をお運び頂きまして
誠にありがとうございます！
それに先日は大層なお祝いの品までいただきまして
家内共々、感激しておる次第です！」

司を見た途端、私を押し退け手揉みせんばかりの勢いでマシンガンのように話し始めてしまった新郎のお父様は
奥様と既に祭壇前にスタンバイしていた新郎さんを隣に呼び寄せ三人揃って彼に頭を下げられた後
叔母に向かって司を紹介した


「牧野さん、こちらの方は道明寺財閥の次期総裁で
現在は道明寺ＨＤの日本支社長をされている道明寺司様です！
わざわざお忙しいのに来てくださったんです」


でね‥

それを聞いた叔母の反応がね‥

まさに豹変って感じ！


今まで胡散臭そうに彼を見ていた目がね‥


５倍ぐらいに大きく開いて
声なんかもどうしたの？ってぐらいに
余所行きの声で‥

さっき控え室で私に嫌味を言っていた時よりも
３オクターブぐらい高いわよ！


「まぁまぁ！これはこれは！
わざわざありがとうございます！
道明寺様ご参列いただけるなんて
牧野家にとって末代までの誉ですわ！」


末代って‥


大袈裟過ぎない？


「ちょっと、つくし！道明寺様をいつまで立たせとくつもりなんだい！
失礼じゃないかい！全く愛弓とは違って気のきかない子で申し訳ございません
さぁさぁ！道明寺様！こちらへどうぞ！」



え～っと

今の私の心境分かるかしら？


ん～っとね‥


猛ダッシュで走って逃げたい気分なの


後はあんた達だけでやって下さ～い！って感じ

分かってくれるわよね？





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