Family 145

一試合終えて私達がいる応援席に戻ってきたパパ達

意外と息も上がってないし汗もかいていないパパは
あたしの横に腰を下ろした

「大丈夫だった？」

「これぐらい楽勝だ！
俺のダンク見たか？まだまだイケてんだろ？」


「う～ん‥よく見てない‥」


「見てないって！お前！何やってたんだよ？！」


「だって‥ケガしないかとか乱闘にならないかとか‥
色々考えちゃってドキドキしてまともに見れなかったのよ！
だから、西門さんにずっと実況してもらってたからパパがダンクしたのは知ってるけど‥」


本当にね

心臓に悪い

翼だけでもドキドキでまともに見れないのに

パパまでなんて！

パパ達は当然、勝つつもりでやってるんだろうけど

わたしは勝ち負けとかじゃなくて

パパや翼がケガしないかとか
結構当たりの強いスポーツだから
相手にぶつかられたりしてパパが切れないかとか
そっちの方が心配で‥

「ったくお前はしょーがねぇやつだな！
俺がそれぐらいで切れるわけねぇーだろ？！
今日は優勝すんだぞ！お前もくだらねぇ心配ばっかしてねぇーで
ちゃんと格好いい俺を見とけよ！」


だなんて

頭をナデナデされた

なんだか

めっちゃご機嫌なパパなんだけど

一回戦に勝てた事がそんなに嬉しかったのかしら？




順調に勝ち進んでいくパパ達と海斗君のチーム

回を重ねる毎にパパ達の動きは良くなっているみたい

あたしも少しずつ落ち着いてきて
すっかり場の雰囲気に慣れた双子ちゃんは
応援席の縁に身を乗り出す勢いでパパ達を応援していて
あたしは二人が落ちないように後ろから体を抱えながら応援していた

試合の方も回が進む毎にレベルも上がっていて
流石のパパ達も苦戦している場面が多くなってきている

３回戦

この試合に勝てばベスト４に入れる

目の前のコートではパパ達が
その隣のコートでは海斗君達が試合をしている

両チーム共に接戦で頑張っている

「パパ～！翼～！頑張って～！」

「ぱぱ～ちゅばちゃ～がんばぇ～！」

「がんばぇ～！」

残り３０秒

パパからパスを受けた翼がダンクを決めて２１点先取でなんとか勝利
パパ達は勝ったんだけど
隣のコートの海斗君達は‥


あ～‥残念

接戦だったんだけど

タイムアウト寸前にゴールを決められてしまい
惜しくも負けてしまった

翼は負けてガックリと肩を落としている海斗君達に駆け寄り
互いの健闘を称え合っている

そんな翼の姿を見ていて
普段は可愛くないことばっかり言ってて
本当に憎らしい時だってあるけど
負けて落ち込む友達を労ってあげている姿を見ていると
やっぱり可愛くていい奴じゃん！

なんて思ってしまって

今日の晩御飯は翼の好きな物にしてあげようなんて考えちゃう
あたしってやっぱり親バカじゃん！



あたしにとっては予想外の健闘で
パパ達にすれば当たり前？の決勝進出

準決勝も接戦の末に海斗君君のチームに勝ったチームを下し
海斗君達の敵討ちを取った！と鼻息の荒い翼と
激戦の連続で流石にちょっとだけイケメンっぷりが鳴りを潜め

ちょっとだけ


ほんとにちょっとだけよ

残念な感じになっちゃってる

決勝前には少しだけインターバルがあって

３０分程休憩時間がある

隣に座っているパパはここに来ても至って普通で

喉が渇いたからビール持って来いなんて
ふざけた事を言っている

「これから決勝なのにビールなんてダメでしょ？！
酔っぱらって試合するつもり？！」


「ビール一杯ぐらいで酔うわけねぇーだろ！」


なんて言っているけど


お酒飲んでバスケなんて冗談じゃない！


「そんな事言ってるんじゃないでしょ！

お酒飲んでバスケなんて！有り得ないっつーの！もぅ！」


呆れながらパパには炭酸水の入ったグラスを手渡す


パパはビールじゃない事が本気で不満そうだったけれど

そこは見ないフリで‥


後は双子ちゃん達に任せる！


この二人


パパを転がすのが上手いのよね


両サイドからパパを挟み撃ちにして

あの笑顔で


"パパ、ちゅごぃでしゅねぇ～"


だとかね


"パパ、かっこいいでしゅ！"


だとか


"パパがいちばんでしゅ！"


とかね‥


一瞬でパパの顔の筋肉が遠い宇宙の彼方へ旅立ってしまう


今だって


ほら！


デレ～っとしちゃって！





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