万有引力のススメ 3
おはようございます。
本日も『万有引力のススメです。』🎶
それではどうぞ~✴
ダメだ
頭の中がグルグルしてる
今夜は宿題どころじゃなさそうだ
母さんが帰って来たらさっきの事をなんて話そうか考えながら
風呂にでも入ろうと着ていたトレーナーを脱ごうとした時
再びドアをガンガンと叩く音がして
あの人が戻ってきた
「オイ!樹!開けろ!」
ドアを連打するその音に俺の父親ってせっかちな性格なんだと思った
「オイ!早く開けろ!
じゃねぇーとドアぶち破るぞ!」
加えてかなり暴力的なんだとも思った
もしかして俺に父親が居なかった原因はこれか?
DV男で母さんはその暴力から逃げた?
だとしたら尚更、ドアを開けるわけにはいかない
「や、止めて下さい!
警察呼びますよ!」
「チッ、呼びたきゃ警察でもなんでも呼べ!
だけど警察が来る前にこんなチンケなドアなんて簡単に蹴破れるぞ!」
舌打ちと共に続けられた言葉
言われてみれば確かにそうだ
俺とあの人の間を隔てているのは
薄い板のドア一枚だけ
俺にだって簡単に蹴破れる
やらねぇーけど
どうする?
開ける?
蹴破られる?
どっちにしてもドアは開いて結果は同じ?
なら窓から逃げる?
いや
なんで逃げなきゃいけないんだ?
逃げる必要はないだろ?
怖いけど玄関に置いてある
素振り練習用の金属バットを手に
何かあったらこれで反撃する覚悟で
でもちょっと腰が引けながらゆっくりとドアを開けた
解錠した音と同時に勢いよく開かれたドアの向こう
身長が175センチの俺が見上げなきゃいけない程
背が高く特徴的な髪型の男性がいた
金属バットを振り上げていつでも反撃出来る体勢の俺の方に
ゆっくりと向かってくる男性
一歩
二歩で俺のすぐ目の前まで来た男性は
金属バットを振り上げたままの俺を抱き締めた
"ごめんな、長い間会いに来れなくて"
抱き込むように押しつけられた男性の胸元で聞いた声は思いの外優しくて
あれ?
なんだこれ?
今まで感じていた戸惑いや恐怖や消えて
代わりにずっと抱えていた色々と複雑な感情が溢れ出てきて混乱する
この人は父親だと名乗ったけれど
この人が父親だとは限らない
外見は確かにそっくりだけど
俺は父親を知らない
俺を抱きしめている人を知らない
なのに意志に反して体はこの人を拒絶していなくて
委ねるように力が抜けていく
振り上げていた腕はいつしか下に下ろされていて
抱きしめられている腕を振りほどくこともせず
大人しくされるがままの状態
なにか言わなきゃとは思うんだけど
適当な言葉が見つからない
抱きつかれたまま
抱きしめ返すこともせず
棒のように突っ立ったまま
開いたままのドアから吹き込む真冬の冷気を感じながら
沸き上がり溢れ出しそうになる感情を必死で堪えていた

応援ありがとうございます。
本日も『万有引力のススメです。』🎶
それではどうぞ~✴
ダメだ
頭の中がグルグルしてる
今夜は宿題どころじゃなさそうだ
母さんが帰って来たらさっきの事をなんて話そうか考えながら
風呂にでも入ろうと着ていたトレーナーを脱ごうとした時
再びドアをガンガンと叩く音がして
あの人が戻ってきた
「オイ!樹!開けろ!」
ドアを連打するその音に俺の父親ってせっかちな性格なんだと思った
「オイ!早く開けろ!
じゃねぇーとドアぶち破るぞ!」
加えてかなり暴力的なんだとも思った
もしかして俺に父親が居なかった原因はこれか?
DV男で母さんはその暴力から逃げた?
だとしたら尚更、ドアを開けるわけにはいかない
「や、止めて下さい!
警察呼びますよ!」
「チッ、呼びたきゃ警察でもなんでも呼べ!
だけど警察が来る前にこんなチンケなドアなんて簡単に蹴破れるぞ!」
舌打ちと共に続けられた言葉
言われてみれば確かにそうだ
俺とあの人の間を隔てているのは
薄い板のドア一枚だけ
俺にだって簡単に蹴破れる
やらねぇーけど
どうする?
開ける?
蹴破られる?
どっちにしてもドアは開いて結果は同じ?
なら窓から逃げる?
いや
なんで逃げなきゃいけないんだ?
逃げる必要はないだろ?
怖いけど玄関に置いてある
素振り練習用の金属バットを手に
何かあったらこれで反撃する覚悟で
でもちょっと腰が引けながらゆっくりとドアを開けた
解錠した音と同時に勢いよく開かれたドアの向こう
身長が175センチの俺が見上げなきゃいけない程
背が高く特徴的な髪型の男性がいた
金属バットを振り上げていつでも反撃出来る体勢の俺の方に
ゆっくりと向かってくる男性
一歩
二歩で俺のすぐ目の前まで来た男性は
金属バットを振り上げたままの俺を抱き締めた
"ごめんな、長い間会いに来れなくて"
抱き込むように押しつけられた男性の胸元で聞いた声は思いの外優しくて
あれ?
なんだこれ?
今まで感じていた戸惑いや恐怖や消えて
代わりにずっと抱えていた色々と複雑な感情が溢れ出てきて混乱する
この人は父親だと名乗ったけれど
この人が父親だとは限らない
外見は確かにそっくりだけど
俺は父親を知らない
俺を抱きしめている人を知らない
なのに意志に反して体はこの人を拒絶していなくて
委ねるように力が抜けていく
振り上げていた腕はいつしか下に下ろされていて
抱きしめられている腕を振りほどくこともせず
大人しくされるがままの状態
なにか言わなきゃとは思うんだけど
適当な言葉が見つからない
抱きつかれたまま
抱きしめ返すこともせず
棒のように突っ立ったまま
開いたままのドアから吹き込む真冬の冷気を感じながら
沸き上がり溢れ出しそうになる感情を必死で堪えていた

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