万有引力のススメ 18

左手を顔の高さまで持ち上げて至近距離で見た指輪は
まだ薄暗い部屋の中でもキラキラと耀きを放っていて

すっごくキレイ


なんだけど


いつの間に？


まぁ、寝てる間に勝手にはめたのは
隣でまだスヤスヤと寝息を立てている
クルクルアナコンダしかいないんだけど

なに勝手にはめてんのよ？！って思うのとは裏腹に
キラキラにニヤニヤが止まらない

あたしだって一応は女の子なんだから！

自分で言ってて凹むんだけど‥

一応は女の子なんだから！

キラキラは好き！

左手を高く掲げキラキラにうっとりして
自分の手を見て一気に現実に‥

あたしの手‥

普段から手入れなんてしてないから
あかぎれだらけでガサガサだし‥

手だけじゃなくて全身そんな感じ

学歴も何も無い女が一人で子供を育てながらの生活は
予想以上に大変だった

だけど樹を生んだ事を後悔したことなんて一度もなくて
寧ろ樹がいてくれたから頑張れた
だから人の目なんて気にしていられなかった

体調を崩したら終わり

働けない

働けないって事は生活が出来なくなるってこと

だから少々の体調不良でも休めなくて‥
休むのが怖くて

無理を押して押して押しすぎてしまって
樹が３歳の頃には養護施設に預かってもらわないといけない状況になってしまった

結果、そこで椿お姉さんに知られてしまった
援助は断ったからそれ以降は何も接点は無かったけれど
それでも節目節目にはお姉さんから

樹にとプレゼントが届いていた

樹が使っていたランドセルや修学旅行に持って行ったバッグなんかも
椿お姉さんが送ってくれた物だったし
中学生になった時も制服や野球の道具なんか‥

直接、顔を合わせる機会はなかったけれど
椿お姉さんはいつも私達を気にかけてくれていた

そんなお姉さんには感謝しているけれど
それと今の状況は別

彼が樹の事を受け入れてくれて
大切に思ってくれているのは嬉しいけれど

それとあたしが彼ともう一度って話は全く別の問題

あたしが彼に釣り合うわけがない

高校を中退しちゃったから学歴は中卒だし
英語だって話せない
そんなあたしが彼の隣になんて‥

どう考えても無理でしょ？

ガサガサの手にキラキラの指輪

不釣り合いにもほどがある

そう思ってため息と共にゆっくりと指輪を外した





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