黒猫ちゃん気をつけて！ 2(2019ハロウィン)

「クソッ！なんでちゃんと聞いとかねぇーだよ？！」

「彼氏は司でしょ。
司こそなんでちゃんと聞いてないわけ？」

「るせぇ！時間が無かったし聞いてもちゃんと答えなかったんだよ！」

「それって司が牧野に信用されてないってことなんじゃないの」

「んだと！？てめぇ、ケンカ売ってんなら買うぞ！」

「司！いい加減にしとけ！
類！お前もだ！」

１０月の最後の週末

司のリムジンの中

猛獣VS王子様の皮を被った悪魔君が
鈍感ボケボケ猛獣使いの女を巡って言い争い

何年経っても変わらないこの構図に
ため息を付きながらもリムジンの中で殴り合いに発展しそうな所を止めに入る

高等部を卒業後

とりあえずは海を渡った親友は

ＮＹで大学に通う傍ら仕事も始め
忙しいながらも順調に遠距離恋愛ってやつをやっていたが
大学を３年で卒業するとその足で帰国し
再び英徳へと戻ってきた

戻ってきたと言ってもこちらで本格的に仕事を始めたので
ほとんど大学には顔は出していない

だけどＮＹの時と比べれば格段に近くなった牧野との距離
帰国後はなんやかんや言いながらも順調に交際を続けていた

司はこの１ヶ月、お袋さんに世界中を連れ回されて
昨日、漸く上海で解放されたらしいけれど

肝心の牧野は単発のバイトだとかで朝から連絡が取れず
盛りがつきまくりの猛獣が１ヶ月の禁欲生活から脱却すべく
牙を剥き出しで愛しい猛獣使いを求め街をさまよっている

のに

何故か付き合わされている俺達

バイトの連絡が来た時に一緒にいた類に当たりまくる司と
それを交わしながら司をからかう類とため息の俺と
我関せずとばかりにさっきからずっとスマホをいじっている総二郎
四人四様の俺達を乗せたリムジンが街をさまよっている





「おっ！これじゃねぇ？」

ずっとスマホをいじっていた総二郎から発せられた言葉に反応すると
奴はスマホの画面をこちらへと向けてきた

画面にはSNS画面が写し出されていて
新発売のチョコレートのＰＲキャンペーンで試食品を配っていると書かれていて
チョコレートやら新発売やらのタグか付けられている

けどよ‥

一緒にアップされていた写真が‥

「ヒュ～、あいつ、洗濯板のくせに一丁前に谷間なんて作りやがって！笑えるぞ！」

口笛を一つ

吹きながらの総二郎の言葉に反応した猛獣が
総二郎からスマホを奪い取り黒猫姿の猛獣使いの写真を見た途端

猛獣の鼻から鼻血が‥

司‥

き、気持ちは分かる！

分かるか？

ん～やっぱ分かんねぇ！

男の生理現象としては
分からなくもねぇーぞ！

で、でもな

中学生じゃねぇーんだから
鼻血はねぇーだろ！？

まぁ、長い長い禁欲生活を経て
やっと牧野とそういう事が出来る関係になって
お前の頭ん中では常に裸の牧野がダンスしてんだろうけど

鼻血はねぇって！

「プッ！司、鼻血出てるよ、ククククッ」

司を指差しながら腹を抱えて笑い始めた類

「るせぇ！ほっとけ！」

手の甲で慌てて鼻血を拭った司は
写真をまじまじと見つめると今度は怒り始めた

「あいつ、なんて格好してんだよ！
ほとんど裸じゃねぇーかよ！」

「ハロウィンだから仮装してんだろ」

「はぁ？！ハロウィンなんて関係ねぇーんだよ！
公衆の面前で有りねぇーだろ！
変な男が寄ってくんだろ！？」

お前以上に変な男はいねぇって！

ってのは俺の心の呟き

「このチョコレートは甘いのが苦手な大人の男でも
気にせず食べられるってのがコンセプトみてぇーだから
わざと男が寄ってくるような衣装をチョイスされてんだろ。
他の子も露出高めのセクシー系だしな」

「他の女なんてどうでもいいんだよ！
あいつもあいつだ！断れっつーの！クソッ！あのバカ女！許さねぇ！
オイ！総二郎！場所は何処だ？！」

「◯△◯の駅前広場って書いてあんぞ」

場所を聞くなり車内の電話で運転手に指示を出した司は
返す刀で今度は自分のスマホで西田に連絡を取り

SNSに上がっている黒猫ちゃんの写真を全て削除させて
ＰＲイベントを企画したイベント会社は元より
関わった人間を全て処分しろと指示を出してやがる


はぁ～それじゃあ猛獣使いの捕獲に行きますか！






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