クリスマスには行列に‥
こんばんは。(#^.^#)
予告していたクリスマス話です。🎶
あんまり甘くありませんが‥😅
最近はファミリー物ばかりだったので
久しぶりに恋人同士の司君とつくしちゃんをお楽しみ頂ければ嬉しいです。♥
それではどうぞ~✴
私信です
☆様
こんにちは~♥
コメントありがとうございます。😆
ムフフ💕いつもお待たせしてばかりでごめんなさいm(__)m
クリスマスを楽しんでくださいね🎵
NYから戻って4年
牧野との関係は順調
世間にはまだ顔も名前も公表してねぇが
俺の婚約者としてパーティーなんかには出席しているから
知ってる奴も多い
牧野は目標通り弁護士となり
道明寺家の顧問弁護士を務めている
漆原・マッキンレイ法律事務所に籍を置き
今は道明寺HDの法務部門に出向中
来年の春には入籍し正式に道明寺HDの法務部に移籍する予定になっている
そんな公私共に充実しまくりの独身最後のクリスマスの早朝
まだ陽も明けきらぬ午前6時
俺はクリスマス限定のコスメを手に入れる為に
道明寺系列のデパートの外に並んでいる
まだ人影も疎らな都心部
冬の朝特有のキーンと引き締まった空気の中
デパートの外周をぐるりと囲むように続く行列の中程に並ぶ俺と牧野
同じように列に並ぶ奴らは圧倒的に女が多い
中にはチラホラ男の姿も見かけるが
どいつも女連れのカップルで
俺と同じようにクリスマスの早朝
彼女にせがまれて仕方なくって表情の奴ばかり
いくら暖冬だと言われていても
12月末の早朝の気温は5度を下回っていて
寒いのが苦手な俺にとっては何の罰ゲームだよ?!って感じ
クリスマス当日の早朝に
なんでこんな事になってるかって?
それは俺も知りてぇーよ!
事の始まりは1ヶ月程前
仕事終わりに牧野の部屋を訪ねていた時
こいつが俺のタブレットを何やら真剣な表情で操作していた
「何見てんだ?
また食いもんか?」
「失礼ね!違うわよ!
クリスマス限定のコスメの抽選に申し込んでんのよ!」
牧野が普段から好んで使っているコスメのブランドが
クリスマス限定で発売する限定キット
牧野曰く
普段使っている化粧水や乳液などに加え
ファンデーションがクリスマス限定コンパクトに入っていて
クリスマス限定キット限定カラーのリップにって‥
何回、限定って使うんだよ?!
とにかく限定って言葉に弱い牧野は
"ほら!このリップにグロスもクリスマス限定カラーで
普段じゃ手に入らないんだよ!"
とか鼻息が荒い
"ねぇ!見て!このポーチも可愛い~!"
牧野が狙っている限定キットは
このコスメブランドの創立50周年記念も兼ねているようで
北欧のインテリアブランドとコラボしたポーチに入っていて
全世界で限定5,000個を15,000円で発売するらしい
"凄いよね~5,000個しかないけど
これだけ入ってて15,000円なんて
すっごくお買い得!"
でた!
牧野を擽る一番のパワーワード
"お買い得!"
何がお買い得なのかさっぱりだけど
そんなに欲しいなら手に入れてやろうか?と言った俺を
ギロリと睨み付けやがったから
早々にベッドに引きずり込み
数週間ぶりの牧野を堪能していた
で‥
抽選の結果は
見事に外れ
外れて落ち込んでいたけれど
まさか発売日のクリスマス当日に
こんな早朝から行列に並ぶとは思ってもいなかった
俺の考えが甘かった
落ち込んではいたけれど
それ以降は何も言っていなかったから
諦めたのだと思っていた
それが蓋を開けてみれば
クリスマス当日の早朝から当日の店頭での抽選販売に並ぶとほざいた牧野
ざけんな!
俺が死ぬ気でもぎ取ったイブからこいつの誕生日までの休暇
海外でも行かねぇか?と誘った俺に
被せるように"行かない"と即答しやがった
"それじゃあ国内の別荘にでも‥"
"今年は何処にも行かないよ
あたしは限定キットをゲットしに行くんだから!"
最後まで聞けっつーの!
なにサラッと言ってんだよ?!
そんなに欲しけりゃ俺が手に入れてやるって言ってんだろ!?
そんなのズルじゃん!
みんな自分で努力して手に入れようとしてるのに!
それに自分で頑張って手に入れるからこそ
喜びもひとしおだし充実感があるのよ!
とか言いやがって
一言言っただけなのに
倍以上返してきやがる!
お前の充実感より
俺の充実感だろ?!
俺の‥
充実感とか
色々と
その他諸々も考えろよな!
その後は
押しても
引いても
キレても
ダメで
結局、こいつには弱い俺は
クリスマスの早朝に行列に並んでいる
「さみぃ」
小さく零れた声を聞き逃さなかった牧野が俺の方に振り向き様に放った言葉は‥
「だから付いて来なくていいって言ったでしょ?
おとなしく部屋で待っててくれればよかったのに」
あ~こいつはこういう奴だった
普通だったらクリスマスの早朝に一緒に行列に並ぶ彼氏に
"寒いのに付き合ってくれてありがとう"ぐらい言うだろ?
だけどこいつは違う
クリスマスの早朝に追い返そうとしやがる
「帰んねぇーよ!」
「でも風邪なんかひいたら大変じゃない?!
西田さんに申し訳ないでしょ!」
「西田なんて気にすんな!」
「気にするっつーの!
あんたが体調崩したら西田さんに迷惑が掛かるんだからね!
そんな事になったら西田さんに申し訳なくて
会わせる顔がないでしょ!」
「うるせぇーよ!
俺はそんなにやわに出来てねぇ!」
「もぅ!ほんとに風邪ひいても知らないからね!」
「そん時はお前が看病しろよな!」
「え~やだよ~!
あんた絶対に変なことしてきそうだもん!」
笑いながら持っていたカイロを俺の頬に当ててくる牧野
「温かい?」
「あぁ」
「少しは違うだろうからコレ持っててよ」
「いらねぇーよ、そんなもん!
それよりこっちの方がいい」
そう言いながらカイロを持つ手を引き寄せ
牧野を俺のコートの中に引き込んだ
「ちょ、、恥ずかしいから止めてよ!」
背中からコートの中に抱き込むように抱きしめる俺に
抵抗する牧野
「うるせぇーよ!
こうしてると暖けぇーんだよ!」
「もぅ!重いってば!
体重乗っけるな!」
牧野の頭に顎を乗せ覆い被さるように抱きつく俺
「なぁ、これが終わったら軽井沢の別荘にでも行かねぇーか?
あそこなら雪が降ってるからホワイトクリスマスだぞ」
当然の誘いだろ?
そう思うだろ?
今日はまだ25日
俺の休みは28日の午後10時まで
その後はそのままNYへ飛ぶことになっている
おっ!正月休みのこいつも一緒に連れて行く予定だけどな
当然だろ?
日本は正月休みでこいつは正月番組でも観ながら
こたつでのんびりまったりなんて考えてんだろうけど
のんびりまったりしてる暇があんなら
俺様の相手しろよ!って感じじゃねぇ?
そんなこんなで年末年始の2週間程は
こいつとずっと一緒にいる予定で
イブからこいつの誕生日までは
どっか南の島のコテージにでも行って
二人っきりでのんびりまったりとって予定にしてて
あんなことや
こんなことや
そんなことまで!
色々と妄想し過ぎて
昨日の夜はこいつの顔を見るなり
襲い掛かっちまって‥
相変わらずの余裕の無さに我ながら
ちょっと‥
ちょっとだけだぞ!
本当にちょっとだけ反省したから
こんな朝っぱらから行列に並んでいるのに‥
「う~ん‥今年はいい‥」
少しだけ考えるような素振りを見せながらも
結局は誘いを断った牧野
「んでだよ?クリスマスなんだぞ!
貴重な休みなんだぞ!?」
こうも断られると流石の俺様もムカついてくる
俺の声に少しだけ怒気が含まれ始めたのを敏感に感じ取った牧野は
腕の中の体勢のままくるりと身体を反転させ
胸元から俺を見上げてきた
「ん~そんなに怒んないでよ。
あたしは移動の時間が勿体無いって思っただけなんだから」
「ねぇ?あたしの誕生日までお休みなんでしょ?」
「あぁ」
「じゃあ後4日‥都内で誰にも邪魔されない所で‥
食料とか買い込んでずっと部屋から出ずに
二人だけで過ごすとかってどう?」
どう?って聞いてんのか?
さ、賛成だ!
大賛成だ!
次いでに言うと
4日間ずーっとベッドの中でも構わねぇ!
「お、おぅ!」
やべぇ!
思わず声が上ずっちまった!
「あたしの部屋でもいいけど
どこかいい所ある?」
「おぉ、任せとけ!」
返事をしながら頭の中はフル回転
誰にも邪魔されず
二人だけで過ごせる場所を探している
屋敷は‥論外だ!
タマにメイド
こいつを惑わせるトラップが至るところに有りすぎる!
じゅあ、メープルか?
メープルもダメだ‥
メープルに4日も籠るなんて
ぜってぇこいつが嫌がる
牧野の部屋は‥誰が押し掛けてくるか分かんねぇからここもダメだ!
そうなるとあそこだな
「あぁ、都内じゃねぇーけど
千葉の別荘はどうだ?あそこなら1時間ちょっとで行けるし
海が目の前だから静かでいいぞ」
「ん~そうだね、いいかも‥
じゃあ千葉で決まりね!」
「ねぇ?初めてだね‥二人だけで4日も過ごせるなんて‥」
本当はその後もNYで一緒だけどな
それはまだ内緒だ!
「んだよ?来年からは毎日一緒に居られるだろ?」
「うん、でも‥今までなかったからさ‥
普通の恋人同士みたいで‥
なんかちょっと嬉しいかも‥」
スイッチオン!
するだろ?!
ずっと上目遣いで
頬を染めながら
普段じゃぜってぇ聞けないような事を言われたら
スイッチオン!
するっつーの!
俺が悪ぃんじゃねぇからな!
煽ったのはお前だからな!
コートの中で抱きしめたままの牧野を
そのまま文字通り抱き上げ並んでいた列から外れ
待機させたままだったリムジンに乗り込んだ
「ギャァ!ちょ、ちょっと!どこ行くのよ!?」
「煽ったお前が悪い!我慢出来ねぇ!
とりあえずメープルで一回やらせろ!」
「イヤだ!あたしの限定キット~!」
「そんなもん幾らでも手に入れてやる!」
「ギャァ~!へんた~い!」
シートにくみ敷しくように覆い被さる俺を押し返しながら
リムジンの中に木霊する牧野の色気の無い叫び声
「叫ぶなって!」
「だったら離しなさいよ!
でもって!あたしの限定キット~!」
「心配すんな!
限定キットなら幾らでも手に入る!
なんせあそこは道明寺の系列会社だから!
おっ!ついでにいえば筆頭株主はお前だぞ!」
俺の言葉に今まで散々、抵抗していたのをピタリと止め
大きく目を見開き固まっている牧野
ククククッ
このコスメブランドは
こいつが仕事を始め本格的に化粧をするようになってから
ビューティー番長を自認する三条から薦められて使い始め
こいつにとっては少々値段は張るが
自分の肌に合っているとずっと使い続けていたから
以前より少しずつ株を買い増やしていたが
買収までは考えてはいなかった
だけど今回の事を機に一気に買収までこぎつけ
道明寺の傘下に納め買収で得た株式は全てこいつ名義にしてあった
「ど、どういうこと?」
「だからあそこは俺が買収して
株は全部お前の名義にしてあるんだよ」
「‥‥‥‥」
「礼なら要らねぇーぞ!」
「いや‥そうじゃなくて‥
いつから?いつ買収なんてしたのよ?!」
「先月だ!」
「先月?!」
「あぁ、以前から株はかなり買ってたけどな
今回、お前が抽選に外れたって落ち込んでただろ
そんときはぶっ潰してやろうかって思ってたけど
考えなおして買収してやった!」
「そんな短期間で‥買収なんて出来るものなの?」
「俺様を誰だと思ってんだよ?!
舐めんなよ!
あれぐらい俺様なら朝飯前だ!」
「いや、舐めてなんてないけど‥
あたしが筆頭株主なんだよね?」
「あぁ、そう言っただろ」
「じゃあさ‥あんたはそれを知ってて
あたしに付き合ってくれてたの?」
「あぁ、愛を感じるだろ?」
「プッ!」
「んで笑うんだよ?!」
「だってすんごいドヤ顔してるから、クスッ」
「笑うなっつてんだろ!
おっ!一つ教えといてやるよ!」
「これ以上まだなにかあるの?」
「今年の株主優待の特典はクリスマス限定キットの全色セットだぞ!」
「それって‥もしかしてあんたが?」
「あぁ、愛を感じるだろ?」
「プッ!もぅ!そればっかり!」
気が抜けたのか俺にくみ敷かれたまま
本格的に笑い出した牧野の額にキスを一つ
「くすぐったいってば!」
額に頬に鼻頭へと順番にキスを落としながら
笑ったままの瞳にも‥
愛を込めて
キスを‥
愛を感じるだろ?
~fin~
『オマケ』
信じらんない!もう夜じゃない!
今から別荘行くか?
ん~今からはムリ‥
あ~ぁ、海に昇る朝日を見ながらあんたとモーニングコーヒー飲もうと思ってたのに!
もぅ、バカ!
よし!じゃあ行くぞ!
だからあたしはムリだってば!
もぅ、動きたくないのよ!
連れてってやるから心配すんな!
海に昇る朝日に照らされながら一緒に天国にいこうな!
イ~ヤ~だ~!

応援ありがとうございます。
予告していたクリスマス話です。🎶
あんまり甘くありませんが‥😅
最近はファミリー物ばかりだったので
久しぶりに恋人同士の司君とつくしちゃんをお楽しみ頂ければ嬉しいです。♥
それではどうぞ~✴
私信です
☆様
こんにちは~♥
コメントありがとうございます。😆
ムフフ💕いつもお待たせしてばかりでごめんなさいm(__)m
クリスマスを楽しんでくださいね🎵
NYから戻って4年
牧野との関係は順調
世間にはまだ顔も名前も公表してねぇが
俺の婚約者としてパーティーなんかには出席しているから
知ってる奴も多い
牧野は目標通り弁護士となり
道明寺家の顧問弁護士を務めている
漆原・マッキンレイ法律事務所に籍を置き
今は道明寺HDの法務部門に出向中
来年の春には入籍し正式に道明寺HDの法務部に移籍する予定になっている
そんな公私共に充実しまくりの独身最後のクリスマスの早朝
まだ陽も明けきらぬ午前6時
俺はクリスマス限定のコスメを手に入れる為に
道明寺系列のデパートの外に並んでいる
まだ人影も疎らな都心部
冬の朝特有のキーンと引き締まった空気の中
デパートの外周をぐるりと囲むように続く行列の中程に並ぶ俺と牧野
同じように列に並ぶ奴らは圧倒的に女が多い
中にはチラホラ男の姿も見かけるが
どいつも女連れのカップルで
俺と同じようにクリスマスの早朝
彼女にせがまれて仕方なくって表情の奴ばかり
いくら暖冬だと言われていても
12月末の早朝の気温は5度を下回っていて
寒いのが苦手な俺にとっては何の罰ゲームだよ?!って感じ
クリスマス当日の早朝に
なんでこんな事になってるかって?
それは俺も知りてぇーよ!
事の始まりは1ヶ月程前
仕事終わりに牧野の部屋を訪ねていた時
こいつが俺のタブレットを何やら真剣な表情で操作していた
「何見てんだ?
また食いもんか?」
「失礼ね!違うわよ!
クリスマス限定のコスメの抽選に申し込んでんのよ!」
牧野が普段から好んで使っているコスメのブランドが
クリスマス限定で発売する限定キット
牧野曰く
普段使っている化粧水や乳液などに加え
ファンデーションがクリスマス限定コンパクトに入っていて
クリスマス限定キット限定カラーのリップにって‥
何回、限定って使うんだよ?!
とにかく限定って言葉に弱い牧野は
"ほら!このリップにグロスもクリスマス限定カラーで
普段じゃ手に入らないんだよ!"
とか鼻息が荒い
"ねぇ!見て!このポーチも可愛い~!"
牧野が狙っている限定キットは
このコスメブランドの創立50周年記念も兼ねているようで
北欧のインテリアブランドとコラボしたポーチに入っていて
全世界で限定5,000個を15,000円で発売するらしい
"凄いよね~5,000個しかないけど
これだけ入ってて15,000円なんて
すっごくお買い得!"
でた!
牧野を擽る一番のパワーワード
"お買い得!"
何がお買い得なのかさっぱりだけど
そんなに欲しいなら手に入れてやろうか?と言った俺を
ギロリと睨み付けやがったから
早々にベッドに引きずり込み
数週間ぶりの牧野を堪能していた
で‥
抽選の結果は
見事に外れ
外れて落ち込んでいたけれど
まさか発売日のクリスマス当日に
こんな早朝から行列に並ぶとは思ってもいなかった
俺の考えが甘かった
落ち込んではいたけれど
それ以降は何も言っていなかったから
諦めたのだと思っていた
それが蓋を開けてみれば
クリスマス当日の早朝から当日の店頭での抽選販売に並ぶとほざいた牧野
ざけんな!
俺が死ぬ気でもぎ取ったイブからこいつの誕生日までの休暇
海外でも行かねぇか?と誘った俺に
被せるように"行かない"と即答しやがった
"それじゃあ国内の別荘にでも‥"
"今年は何処にも行かないよ
あたしは限定キットをゲットしに行くんだから!"
最後まで聞けっつーの!
なにサラッと言ってんだよ?!
そんなに欲しけりゃ俺が手に入れてやるって言ってんだろ!?
そんなのズルじゃん!
みんな自分で努力して手に入れようとしてるのに!
それに自分で頑張って手に入れるからこそ
喜びもひとしおだし充実感があるのよ!
とか言いやがって
一言言っただけなのに
倍以上返してきやがる!
お前の充実感より
俺の充実感だろ?!
俺の‥
充実感とか
色々と
その他諸々も考えろよな!
その後は
押しても
引いても
キレても
ダメで
結局、こいつには弱い俺は
クリスマスの早朝に行列に並んでいる
「さみぃ」
小さく零れた声を聞き逃さなかった牧野が俺の方に振り向き様に放った言葉は‥
「だから付いて来なくていいって言ったでしょ?
おとなしく部屋で待っててくれればよかったのに」
あ~こいつはこういう奴だった
普通だったらクリスマスの早朝に一緒に行列に並ぶ彼氏に
"寒いのに付き合ってくれてありがとう"ぐらい言うだろ?
だけどこいつは違う
クリスマスの早朝に追い返そうとしやがる
「帰んねぇーよ!」
「でも風邪なんかひいたら大変じゃない?!
西田さんに申し訳ないでしょ!」
「西田なんて気にすんな!」
「気にするっつーの!
あんたが体調崩したら西田さんに迷惑が掛かるんだからね!
そんな事になったら西田さんに申し訳なくて
会わせる顔がないでしょ!」
「うるせぇーよ!
俺はそんなにやわに出来てねぇ!」
「もぅ!ほんとに風邪ひいても知らないからね!」
「そん時はお前が看病しろよな!」
「え~やだよ~!
あんた絶対に変なことしてきそうだもん!」
笑いながら持っていたカイロを俺の頬に当ててくる牧野
「温かい?」
「あぁ」
「少しは違うだろうからコレ持っててよ」
「いらねぇーよ、そんなもん!
それよりこっちの方がいい」
そう言いながらカイロを持つ手を引き寄せ
牧野を俺のコートの中に引き込んだ
「ちょ、、恥ずかしいから止めてよ!」
背中からコートの中に抱き込むように抱きしめる俺に
抵抗する牧野
「うるせぇーよ!
こうしてると暖けぇーんだよ!」
「もぅ!重いってば!
体重乗っけるな!」
牧野の頭に顎を乗せ覆い被さるように抱きつく俺
「なぁ、これが終わったら軽井沢の別荘にでも行かねぇーか?
あそこなら雪が降ってるからホワイトクリスマスだぞ」
当然の誘いだろ?
そう思うだろ?
今日はまだ25日
俺の休みは28日の午後10時まで
その後はそのままNYへ飛ぶことになっている
おっ!正月休みのこいつも一緒に連れて行く予定だけどな
当然だろ?
日本は正月休みでこいつは正月番組でも観ながら
こたつでのんびりまったりなんて考えてんだろうけど
のんびりまったりしてる暇があんなら
俺様の相手しろよ!って感じじゃねぇ?
そんなこんなで年末年始の2週間程は
こいつとずっと一緒にいる予定で
イブからこいつの誕生日までは
どっか南の島のコテージにでも行って
二人っきりでのんびりまったりとって予定にしてて
あんなことや
こんなことや
そんなことまで!
色々と妄想し過ぎて
昨日の夜はこいつの顔を見るなり
襲い掛かっちまって‥
相変わらずの余裕の無さに我ながら
ちょっと‥
ちょっとだけだぞ!
本当にちょっとだけ反省したから
こんな朝っぱらから行列に並んでいるのに‥
「う~ん‥今年はいい‥」
少しだけ考えるような素振りを見せながらも
結局は誘いを断った牧野
「んでだよ?クリスマスなんだぞ!
貴重な休みなんだぞ!?」
こうも断られると流石の俺様もムカついてくる
俺の声に少しだけ怒気が含まれ始めたのを敏感に感じ取った牧野は
腕の中の体勢のままくるりと身体を反転させ
胸元から俺を見上げてきた
「ん~そんなに怒んないでよ。
あたしは移動の時間が勿体無いって思っただけなんだから」
「ねぇ?あたしの誕生日までお休みなんでしょ?」
「あぁ」
「じゃあ後4日‥都内で誰にも邪魔されない所で‥
食料とか買い込んでずっと部屋から出ずに
二人だけで過ごすとかってどう?」
どう?って聞いてんのか?
さ、賛成だ!
大賛成だ!
次いでに言うと
4日間ずーっとベッドの中でも構わねぇ!
「お、おぅ!」
やべぇ!
思わず声が上ずっちまった!
「あたしの部屋でもいいけど
どこかいい所ある?」
「おぉ、任せとけ!」
返事をしながら頭の中はフル回転
誰にも邪魔されず
二人だけで過ごせる場所を探している
屋敷は‥論外だ!
タマにメイド
こいつを惑わせるトラップが至るところに有りすぎる!
じゅあ、メープルか?
メープルもダメだ‥
メープルに4日も籠るなんて
ぜってぇこいつが嫌がる
牧野の部屋は‥誰が押し掛けてくるか分かんねぇからここもダメだ!
そうなるとあそこだな
「あぁ、都内じゃねぇーけど
千葉の別荘はどうだ?あそこなら1時間ちょっとで行けるし
海が目の前だから静かでいいぞ」
「ん~そうだね、いいかも‥
じゃあ千葉で決まりね!」
「ねぇ?初めてだね‥二人だけで4日も過ごせるなんて‥」
本当はその後もNYで一緒だけどな
それはまだ内緒だ!
「んだよ?来年からは毎日一緒に居られるだろ?」
「うん、でも‥今までなかったからさ‥
普通の恋人同士みたいで‥
なんかちょっと嬉しいかも‥」
スイッチオン!
するだろ?!
ずっと上目遣いで
頬を染めながら
普段じゃぜってぇ聞けないような事を言われたら
スイッチオン!
するっつーの!
俺が悪ぃんじゃねぇからな!
煽ったのはお前だからな!
コートの中で抱きしめたままの牧野を
そのまま文字通り抱き上げ並んでいた列から外れ
待機させたままだったリムジンに乗り込んだ
「ギャァ!ちょ、ちょっと!どこ行くのよ!?」
「煽ったお前が悪い!我慢出来ねぇ!
とりあえずメープルで一回やらせろ!」
「イヤだ!あたしの限定キット~!」
「そんなもん幾らでも手に入れてやる!」
「ギャァ~!へんた~い!」
シートにくみ敷しくように覆い被さる俺を押し返しながら
リムジンの中に木霊する牧野の色気の無い叫び声
「叫ぶなって!」
「だったら離しなさいよ!
でもって!あたしの限定キット~!」
「心配すんな!
限定キットなら幾らでも手に入る!
なんせあそこは道明寺の系列会社だから!
おっ!ついでにいえば筆頭株主はお前だぞ!」
俺の言葉に今まで散々、抵抗していたのをピタリと止め
大きく目を見開き固まっている牧野
ククククッ
このコスメブランドは
こいつが仕事を始め本格的に化粧をするようになってから
ビューティー番長を自認する三条から薦められて使い始め
こいつにとっては少々値段は張るが
自分の肌に合っているとずっと使い続けていたから
以前より少しずつ株を買い増やしていたが
買収までは考えてはいなかった
だけど今回の事を機に一気に買収までこぎつけ
道明寺の傘下に納め買収で得た株式は全てこいつ名義にしてあった
「ど、どういうこと?」
「だからあそこは俺が買収して
株は全部お前の名義にしてあるんだよ」
「‥‥‥‥」
「礼なら要らねぇーぞ!」
「いや‥そうじゃなくて‥
いつから?いつ買収なんてしたのよ?!」
「先月だ!」
「先月?!」
「あぁ、以前から株はかなり買ってたけどな
今回、お前が抽選に外れたって落ち込んでただろ
そんときはぶっ潰してやろうかって思ってたけど
考えなおして買収してやった!」
「そんな短期間で‥買収なんて出来るものなの?」
「俺様を誰だと思ってんだよ?!
舐めんなよ!
あれぐらい俺様なら朝飯前だ!」
「いや、舐めてなんてないけど‥
あたしが筆頭株主なんだよね?」
「あぁ、そう言っただろ」
「じゃあさ‥あんたはそれを知ってて
あたしに付き合ってくれてたの?」
「あぁ、愛を感じるだろ?」
「プッ!」
「んで笑うんだよ?!」
「だってすんごいドヤ顔してるから、クスッ」
「笑うなっつてんだろ!
おっ!一つ教えといてやるよ!」
「これ以上まだなにかあるの?」
「今年の株主優待の特典はクリスマス限定キットの全色セットだぞ!」
「それって‥もしかしてあんたが?」
「あぁ、愛を感じるだろ?」
「プッ!もぅ!そればっかり!」
気が抜けたのか俺にくみ敷かれたまま
本格的に笑い出した牧野の額にキスを一つ
「くすぐったいってば!」
額に頬に鼻頭へと順番にキスを落としながら
笑ったままの瞳にも‥
愛を込めて
キスを‥
愛を感じるだろ?
~fin~
『オマケ』
信じらんない!もう夜じゃない!
今から別荘行くか?
ん~今からはムリ‥
あ~ぁ、海に昇る朝日を見ながらあんたとモーニングコーヒー飲もうと思ってたのに!
もぅ、バカ!
よし!じゃあ行くぞ!
だからあたしはムリだってば!
もぅ、動きたくないのよ!
連れてってやるから心配すんな!
海に昇る朝日に照らされながら一緒に天国にいこうな!
イ~ヤ~だ~!

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