Garbera 3

「主任、今回の件‥マジ大丈夫なんすかね？
いくら証拠が揃ってるっていっても‥
やっぱ一応、ウラ取った方がいいんじゃないっすか？」

「２課の部長だった堺さんからの案件なんだぞ！
ウラならあの人が取ってんだろ、大丈夫だって！
証拠は揃ってんだ後はその女‥なんていった？」

「‥えーっと‥牧野つくしです‥」

「そうだ、その変な名前の女から自供取ればＯＫだろ？」

「そーっすね‥でも簡単に口割りますかね‥この女？」

「これだけの証拠が揃ってんだ
落ちるのも時間の問題だろ！？」

「だといいんですけどね‥
俺、彼女の誕生日なんでさっさと終わればいいんすけど」

「心配すんな！俺だって娘が待ってんだ！
たまには早く帰って一緒に飯食いたいから
さっさと終わらせんぞ！」

師走の街を走り抜ける一台の車

車内には二人の男

運転席に座っているのは３０代前半で
細いフレームのメガネを掛け紺地にストライプの入っている細身のスーツを着ていて
髪型も今風で今時のお洒落に気を使ってます系
一見すると刑事には見えない

そして助手席に座るのは対照的に
髪は短く日に焼けた精悍な顔つきで
年の頃は４０代半ばあたり
どことなく漫画の中で見たことあるような‥
所謂どこにでもいるザ中年！といった風貌

この二人

共に警視庁捜査２課に所属する刑事で
以前、２課で部長を勤めていた堺から持ち込まれた
業務上横領容疑の被疑者に任意同行を求める為に
都内にあるホテルへと向かっている

堺は退官後、五木商事の顧問を勤めていて
その堺から先月、五木商事内で多額の横領疑惑があると伝えられていた
証拠は揃っている

堺の言葉通り

見せられた取引記録からは牧野つくしという女性社員が
水増し請求や取引先からのキックバックなどで
多額の現金を横領していた事を伺わせていた

そしてそれを裏付けるように牧野つくしの銀行口座には
普通のサラリーマンでは考えられない預金残高が存在していた

その額ざっと３０億
経済事件が専門の２課に於いても
個人の横領事件では滅多にお目にかかれない額の預金が入っていた

「この女‥横領したのは５億ちょっとですよね？
それなのに口座には３０億ってどんな錬金術持ってんですかね？」

「知ってたら先に俺がやってるってーの！」

「そうですよね。でももう一つの口座には入金は給料だけだし
その給料からも毎月決まった額を定期預金にしてたりして
堅実な印象を受けるんですけどね‥」

「真面目で大人しそうな平均以下の女の方が
腹ん中じゃ何考えてんのか分かんねぇもんなんだよ！
とにかくこの女に聞けば分かんだろ」

「そうですね‥素直に吐いてくれれば助かるんですけど」

「吐かせんだよ！
おっ！玄関前じゃなくて地下の駐車場に車入れろよ！」

「地下から入るんですか？」

「おぉ、当たり前だろーが！
もし女が任同を拒否したらすぐに逮捕状を執行するからな！
お前、ちゃんと準備してきただろうな？！」

「一応、してきましたけど‥
本当に使うんすか？やっぱ念のために課長には話通してからにした方が良くないっすか？」

「大丈夫だっていってんだろ！
課長には堺さんが話通してあるっつてただろ？！
心配すんな！これが上手くいきゃ手柄になるし
堺さんにも恩を売れるんだぞ！」


「はぁ‥分かりました‥」

車をホテルの地下駐車場のエレベーターに一番近い場所に停め
伝えられていた部屋へと向かう二人の刑事




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