永遠じゃない‥ 11

結局、ババァの宣言通りの２週間後

弁護士を通して連絡があった

「つくし様より、今夜、部屋で待っています。と
連絡がありました」

簡潔に告げられた言葉に戸惑う

部屋？

「どこの部屋だ？」

「お二人が暮らされていたお部屋の事だと思います」

俺達が暮らしていた部屋だと？

あの部屋なら離婚した時に処分したはず

「あの部屋は‥」

「はい、処分する予定でしたが
途中で社長よりストップがかかり
今でもあの頃のままで残されております」

信じられない言葉に落ち着かず万年筆を弄んでいた手が止まる

「それから社長より、自らが課した条件が完遂されているか
最後まで確認を怠る事は経営者として失格です。
とも承っておりますのでお伝えしておきます」

最後にはしっかりと嫌味まで付け加えてきた西田を睨むけれど
こんな事で怯むようなこいつじゃないから
表情を変える事なく一礼してオフィスを出て行った




思いがけず今夜会える事が決まった俺がしたことは
速攻で仕事を片付け記憶が戻ってから
あいつに会ったら渡そうと思い注文していた指輪を
都内の高級ジュエリーショップに自ら出向いて受け取り
途中の花屋で真紅のバラの花束を買った

二人で暮らしていた部屋の近くにある花屋
この花屋には記憶を失う前に何度も通っていた

この想いが少しでも伝わるように

そう願いを込めて

頑固なあいつの事だから

すぐには無理だとしても‥

少しずつでもいいからと‥

願いを込めて

５年ぶりに部屋のドアを開けた



ドアを開けた先に続いている長い廊下は
あの頃と全く変わっていなくて
５年も足を踏み入れていないなんて信じられないくらい
一瞬で俺をあの頃の感覚へと引き戻した

長い廊下の先のドアを開けリビングへと入っていく

室内には煌々と灯りが点されていて
ダイニングの方からいい臭いが漂ってくる

何もかもが変わらずあの頃のまま

暖かで優しくて幸せに満ちていたあの頃の感覚が懐かしくて
リビングの入り口で立ち尽くしていた俺の耳に届いたのは
あの頃と変わらないつくしの声だった

「あれ？司？
お帰りなさい、早かったんだね」

「あぁ‥」

「お夕飯もう出来るから手洗ってきてよ」

俺は夢を見てるのか？

目の前にはエプロン姿のつくし

俺の願望が見せる幻なのか？

「あぁ‥これ、お前に」

「ありがとう。
ほら！とりあえず手洗ってきてよ！」

俺からバラを受け取ったつくしは
そのまま俺を洗面所の方へと押し出した

「あぁ‥」

促されるままにジャケットを脱ぎ
袖を捲り手を洗いついでに顔も洗った

あの頃と同じ‥

いや‥

違うな‥

あいつは俺が手近にあったソファーに
脱いだジャケットを投げ置いた事を怒らなかった

いつものあいつなら
すかさず"脱いだ物を片付けろ！"と怒っていたはずだ

あの頃と同じなのは‥

時が止まったままだったのは‥

この部屋だけで

俺達の間には確実に５年という時間が流れている

その現実に打ちのめされながらダイニングへと入っていくと
夕飯の準備が整っていて早く座れと急かすつくし

つくしが何を考えているのかさっぱり分からず
立ち尽くしていた俺に

「とりあえず食べない？
それともお腹すいてない？」

「い、いや‥でも、その前に話がしたい」

「それは食べた後じゃダメ？
私も話たい事があるんだけど
今日はお昼食べ損ねちゃったからお腹ペコペコなの」

「あぁ、分かった」

「じゃあ、座って」

５年ぶりのこいつの手料理

俺も朝から何も食っていないから
腹は減っているはず

元々、空腹を感じる事があまり無い俺だけど
あの頃は出張の時以外は毎日、食っていたつくしの手料理

その手料理なのに緊張感からか味がしない

静かな晩餐

互いに言葉を交わす事なく過ぎる時間

ただ目の前のつくしからは俺ほどの緊張は感じ取れず
時折見せる笑顔が俺の不安を煽り鼓動を早める







流れは決まっているのですがつくしちゃんの心情描写が上手く出てこない😢
明日は更新出来るか未定です。ごめんなさいm(__)m

応援ありがとうございます。