Fly High 55
こんばんは。🎶
お引っ越しです。
それではどうぞ~✴
本日の更新はちょっと多めなので再度こちらに記載しておきます。
『Bunker』22
『万有引力のススメ』28
『Fly high』51~55
以上です。
「いいぜ。何賭けるんだ?」
「そーだな・・」
そう言いながらマットがポケットから取り出した物は
「コレでどうだ?」
奴がポケットから無造作に取り出したのは車のキー
「車種は?」
「コルベットのニューモデル」
俺の勝ちだな!
「なら俺はコレだ!」
「なんのキーだよ?」
「ケイマン」
マットが賭けたのはシボレー・コルベット
俺が賭けたのはポルシェ・ケイマンS
「OK!
けど、どうやって確かめるんだ?」
「そんなもん本人に聞きゃーいいだろうが!」
簡単に言うなよな
相手はつくしだぞ!
「お前・・ぶっ飛ばされんのがオチだぞ!」
「なんだよ?ビビッてんのか?
それともケイマンが惜しくなったか?」
「そんなんじゃねぇーよ!
それに負けんのはお前の方なんだよ!」
「俺の勘は外れたことねぇーんだよ!
とにかくあいつを呼んで来いよ!」
「お前が言い出したんだからお前が行って来いよ!」
「俺はダメだ!あきら、行って来い!」
マットがいきなり横で成り行きを見守っていたあきらに声をかけた
行って来いと言われたあきらはあからさまに嫌な顔をしているが
他のメンバーの視線に観念したのか少し両手を上げて降参した
あきらがつくしを連れて戻ってくる・・
全員の視線がつくしに集まっていて妙な空気が漂っている
そんな空気につくしも少し目を泳がせながら
「なによ?」
そのもっともな問いかけにマットはニヤリとするとつくしの肩に腕を回した
「なぁ、ケイト?正直に答えろよ」
「なにを?」
マットは肩に置いていた腕を外しつくしを自分と向かえ合わせにして
逃げられないように両肩に手を置いてから
「総二郎と賭けしてんだからちゃんと答えろよ。
いいな?」
「賭け?なんの賭けよ?」
「お前、カイルとやったよな?」
マットの言葉を聞いた途端、つくしの左眉だけがピクリと動いた
当然マットに蹴りの一発でも入るものだと思っていた
マットもそのつもりで身構えてきたのに
つくしの次の行動は意外なものだった
ニヤリと笑みを零すと
「で?どっちがどっちに賭けてるわけ?」
「お前、それ聞いて答え変えるつもりだろう?」
「そんな事しないわよ。それに答えは決まってるもの。
総二郎はどっちに賭けたの?」
「俺はやってない方」
「何を賭けてるわけ?」
「俺はケイマンでマットはコルベット」
車のキーを目の高さまで持ち上げながら答えると
「そう、じゃあマットはさっさとそのキーを総二郎に渡して。
お終いよ!」
「嘘つくんじゃねぇーよ!
お前、マイアミで絶対やっただろ?!」
「マイアミ・・?あ~あ~・・ハハハハ・・」
「何がおかしいんだよ!?ちゃんと答えろよ!」
いきなり笑い出したつくしにマットが大声を出している
「ハハハハ・・だってあんた・・本当に何も知らなかったんだね?」
「何をだよ!?」
「教えてほしい?」
「さっさと教えろよ!」
「じゃあ、まずそのキーをさっさと総二郎に渡して」
そう言うが早いかつくしはマットの手にあったキーを俺によこした
「答えは簡単よ。私とカイルとじゃ不可能なの。
だってカイルはゲイなんだもん、女には興味ないのよ!」
『ブッーーー!!』
マットが飲んでいたワインを吹き出した
「ちょっと!汚いわよ!
ねぇ、本当に気がついてなかったの?」
「あ、ああ・・」
「ちなみにカイルが好きだったのはあんたよ。
マイアミではあんたを守ってやったつもりだんだけど、
こんな誤解されてるんだったら助けずにさっさと
新しい世界に放り込んでやるんだった」
マットは完全にフリーズしたまま
固まってしまっているマットの脛につくしの蹴りがヒットした
「イッテェーー!」
蹴られた痛みで我に返ったマットにつくしはまたもやニヤリと笑みを零すと
「ちなみに総二郎は知ってたわよ。
・・って言うかみん~な知ってるの、知らなかったのはあんただけね!」
そう言うとつくしは振り返り大きな声で談笑している友人を呼んだ
「ジョージ、リチャード、レイチェル、ジーナにマイケルと・・
総二郎も!あんた達の負けよ!」
「ん?オイ!ケイト、何が負けなんだよ?!」
「賭けてたのよ」
「な、なにを・・?」
「あんたが気付いてるかどうか」
「い、いつから・・?」
「ん~・・5年ぐらい前からかな?」
つくしがマットにそう答えていると
名前を呼ばれたメンバーが続々と集まってくる
それぞれが口々にマットに向かってタメ息を付きながら
"マジかよ?"とか"信じられない・・"
と言いながらつくしにお金を渡している
集まったのは全部で600ドル
1人100ドルづつ賭けてたのか?
600ドルを手にしたつくしはその半分をカイルに渡している
半分の300ドルを手にしたカイルがメイドからワイングラスを
2つ受け取ると一つをつくしに手渡しまず2人で乾杯すると
マットのグラスにも軽くグラスを当てている
「マット、婚約おめでとう。
車を取られたんだってね?いいディーラー紹介しようか?」
「お、おう!サンキュー。
ディーラはいい・・それよりあ、あんま近寄んな!」
『バコッ!』
「イテェーな!なんで殴んだよ!?」
「あんたが失礼な事言うからでしょ!」
「大丈夫だよ、ケイト」
「ダメよ!こいつを甘やかしちゃ!」
「ハハハ・・ケイトは相変わらずマットには厳しいね」
楽しそうに声を上げ笑いながらカイルは
つくしとマットの顔を交互に眺めている
「ところでマット?婚約者は紹介してくれないの?」
「お、おう!紹介する、ちょっと待ってろ!」
マットがつくし達の元から離れたのを合図に俺もカイルに声を掛けた
カイルと合うのは約2年ぶり
当然、類やあきら達は初対面だから紹介していると
マットが滋を連れて戻ってきた
みんなにワインを勧めらるまま飲んでいたらしい滋は
すっかり出来上がっていて・・
普段のハイテンションからさらにワンランクアップした
テンションでカイルとすぐに打ち解けている
しばらくはメンバーが入れ替わり立ち代りで楽しい時間が続いていた
桜子は先ほどから目がランランと輝いていて鼻息も荒い・・
そんな勢いだと逆に男が逃げるぞ!
類はいつもの無表情
まぁ~起きてるだけマシだな・・
あきらも普段と変わらない
次々と声を掛けてくるつくしの友人達と笑顔で会話している
司は・・っと
言うまでもねぇーよな
視線はずーっとつくしを追いかけていて
つくしに近寄ってくる奴を睨んでやがる
オイ!司・・その目・・マジで怖ぇーぞ!
目だけで人殺しそうだわ・・
パーティーは夜遅くまで続き、結局最後まで残ったのはいつものメンバー
マットもあきらも俺もかなりの量の酒を飲んでいて
流石に少し酔いが回ってきている
類はとっくにクッション抱えてソファーで夢の中だし
その横では珍しく桜子もダウンしている
司もかなり飲んでいるはずなのだが見た目は全く変化なし
滋なんてもう問題外で完全な酔っ払い・・
さっきから誰かがちょっと動いただけで大笑いしてやがる
そんな中でメイドに後片付けの指示をしていたつくしも戻ってきて
やっと一息ついている・・
けど・・
なんか微妙~な空気なんだよなぁ~・・
時計は深夜2時を回っている
まず最初に部屋へと引き上げたのがつくしで
「私、そろそろ寝るね。
後は自由にやってて。」
「えぇ~~つくし~!もう寝ちゃうの~?!」
「うん、明日も朝から予定があるから。」
「え~~つまんな~い!もっと飲もうよ~~!!」
「ごめんね、滋さん。
また今度ね。」
つくしはそう言うとソファーで眠ってしまっている桜子と類を
引っ張り起こしリビングを出て行ってしまった
その後は楽しいんだかどうだか?
微妙~な感じのままで気が付くと俺もベッドに倒れこむようにして眠っていた
むっくりと顔を埋めていた枕から顔を上げ時計を確認すると
午後12時を回っている
まだぼんやりとする頭のままでリビングへと入って行くと
誰も居ない・・
みんな出かけたのか?
なんて思いながらコーヒーを淹れリビングの背の低いテーブルの上に置かれていた新聞を手に取った
しばらくするとバッチリと化粧をした桜子が帰ってきた
「西門さん、おはようございます。」
「おう、お前、出かけてたのか?」
「ええ、ランチをいただきに近くのレストランまで。
こちらではシェフも居なければお茶を淹れていただけるメイドも居ないですから。」
・・って
たしかにここは行き届いてるとは言えねぇーけど・・
俺に嫌味を言うなよ!
「他は出かけてんのか?」
「F3の皆さんはお仕事に行かれましたけど、マットと滋さんはお帰りになりましたよ。
先輩も出かけてるみたいです。」
・・・って事は暇なのは俺と桜子だけって事か・・・
けど、今日の俺はこいつの相手してられる程の元気はねぇーな・・
そう思って飲みかけのコーヒーを持って部屋に戻ろうとした俺の背中から
キッチンから水を持って出てきた桜子の声が追いかけてきた
「今晩、また皆さんでディナーをご一緒しましょうって美作さんがおっしゃってましたけど」
「了解!」
短く返事を返すと部屋へ戻りベッドへゴロリと横になると再び睡魔に襲われ目を閉じた・・
目が覚めたのはそれから3時間後
我ながらよく寝たもんだ・・
これじゃあまるで類じゃねぇーか・・?
寝すぎたせいか身体の節々がダルイ
ダルさの残る身体のままベッドから出てリビングへと入って行くと類が戻っていた
今夜は俺と類、桜子の三人であきらに指定されたレストランへと向かった
このレストランは最近NYで話題になっていて
うりはフレンチとエスニックの融合だとか・・
とにかくいつも一杯で予約も数ヶ月先まで取れないらしい
あきらの奴・・どうやってこんなとこの予約を取ったんだ?
入り口であきらの名前を告げると通されたのはぐるりと周囲を
囲むように背の高いソファーが配されているテーブルだった
「よお!早かったな?
「おう!」
テーブルにはすでにあきらにマットと滋そして司の姿もあった
司は記憶が戻ってから明らかに変わった・・
いや変わったというかあの頃に戻っていた
それに今までは仕事が忙しいからという理由で
俺達ともあまり会っていなかったのに
最近では呼び出しにはすぐに応じてくる
それもこれも全てつくしに会いたいがためだろうけど・・・
「総二郎?ケイトは?」
「俺は今日会ってねぇーぞ。」
「先輩なら直接ここに来ると思いますよ。
時間とお店は伝えておきましたから。」
「じゃあ先にやってるか。」
「そーだな。」
その言葉を合図にワインが運ばれてきて和やかな雰囲気で食事が始まっ
食事が始まって10分ほどでつくしが到着した
普段はアップにしてることが多い髪を今日は下ろし
柔らかい空気を纏って現れたつくしは
"遅くなってごめんね"
なんて言いながら俺の隣に座ったがどこかいつもと様子が違っていた
おかしい・・・
いつも変なのだが
今日はどこかぼんやりしているというか・・・
何か考え事をしているみたいだった・・・
話しかけられても上の空で空返事を返してくるだけ
「オイ!ケイト!聞いてんのか?!」
「・・えっ?!・・何?あっ・・ごめん、聞いてなかった」
「ハァ~・・ったくお前はさっきから何ボーっとしてんだよ!?」
「・・ごめん・・ちょっと考え事してたのよ!
で?なんなの?」
「親父さんとお袋さんは元気だったのかって聞いてんだよ!?」
「あっ・・うん、元気だったけど・・
どうして今日、実家に帰ったって分かるの?」
「お前の服装見れば分かるんだよ!」
「そ、そうなの?」
確かにマットの言うとおりだった
つくしは普段、仕事の時はカッチリとしたスーツを
休日などはラフな格好をしている事が多い
友人達と出かける時だって全身ブランド物の
それも新作を身に着けるような事はしていない
だけど今日は上から下までグッチの新作で
身に着けている宝石も明らかに普段とは違う
つくしがこんな格好をする時は大抵、実家に呼ばれた時
「で?親父さんは何の用だったんだ?」
「・・別に・・特に用があったわけじゃないわ。
久しぶりだったからそれだけよ。」
「じゃあなんでそんなボーっとしてんだよ?
仕事でなにかトラぶったのか?」
「なにもトラぶってない。
もういいでしょ?なんでもないからほっといて!」
つくしはそれ以上、話しをしたくないようで彼女にしては珍しく
強い口調で話しを終わらせた
なんとなく気まずい沈黙が降りてくるけどマットは
全く気にしていない様子で話しを続けていく
「お前、日本での式に出れんのか?」
「出席するつもりだけど・・」
つくしがそう答えている時、携帯が鳴り
"ちょっとごめんね"と言い残しテーブルから離れた
5分ほどで戻ってきた彼女は再び席に戻ることは無く
「ごめん!急用が出来たから行かなくちゃいけなの。
本当にごめんね!」
話しながらバッグを手にしたつくしに滋が慌てて椅子から腰を浮かせた
「つくし?仕事?私も行った方がいいよね?」
「大丈夫だよ、滋さん。仕事じゃないから!」
「もう車は呼んだのか?」
「うん、呼んだ。慌しくてごめんね。
後はみんなで楽しんでね」
そう言ってあっさりとレストランを後にしたつくし
この時点で俺達はまだ知らなかった・・・
この日、つくしに何が起こっていたのかを・・

応援ありがとうございます。
お引っ越しです。
それではどうぞ~✴
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『Bunker』22
『万有引力のススメ』28
『Fly high』51~55
以上です。
「いいぜ。何賭けるんだ?」
「そーだな・・」
そう言いながらマットがポケットから取り出した物は
「コレでどうだ?」
奴がポケットから無造作に取り出したのは車のキー
「車種は?」
「コルベットのニューモデル」
俺の勝ちだな!
「なら俺はコレだ!」
「なんのキーだよ?」
「ケイマン」
マットが賭けたのはシボレー・コルベット
俺が賭けたのはポルシェ・ケイマンS
「OK!
けど、どうやって確かめるんだ?」
「そんなもん本人に聞きゃーいいだろうが!」
簡単に言うなよな
相手はつくしだぞ!
「お前・・ぶっ飛ばされんのがオチだぞ!」
「なんだよ?ビビッてんのか?
それともケイマンが惜しくなったか?」
「そんなんじゃねぇーよ!
それに負けんのはお前の方なんだよ!」
「俺の勘は外れたことねぇーんだよ!
とにかくあいつを呼んで来いよ!」
「お前が言い出したんだからお前が行って来いよ!」
「俺はダメだ!あきら、行って来い!」
マットがいきなり横で成り行きを見守っていたあきらに声をかけた
行って来いと言われたあきらはあからさまに嫌な顔をしているが
他のメンバーの視線に観念したのか少し両手を上げて降参した
あきらがつくしを連れて戻ってくる・・
全員の視線がつくしに集まっていて妙な空気が漂っている
そんな空気につくしも少し目を泳がせながら
「なによ?」
そのもっともな問いかけにマットはニヤリとするとつくしの肩に腕を回した
「なぁ、ケイト?正直に答えろよ」
「なにを?」
マットは肩に置いていた腕を外しつくしを自分と向かえ合わせにして
逃げられないように両肩に手を置いてから
「総二郎と賭けしてんだからちゃんと答えろよ。
いいな?」
「賭け?なんの賭けよ?」
「お前、カイルとやったよな?」
マットの言葉を聞いた途端、つくしの左眉だけがピクリと動いた
当然マットに蹴りの一発でも入るものだと思っていた
マットもそのつもりで身構えてきたのに
つくしの次の行動は意外なものだった
ニヤリと笑みを零すと
「で?どっちがどっちに賭けてるわけ?」
「お前、それ聞いて答え変えるつもりだろう?」
「そんな事しないわよ。それに答えは決まってるもの。
総二郎はどっちに賭けたの?」
「俺はやってない方」
「何を賭けてるわけ?」
「俺はケイマンでマットはコルベット」
車のキーを目の高さまで持ち上げながら答えると
「そう、じゃあマットはさっさとそのキーを総二郎に渡して。
お終いよ!」
「嘘つくんじゃねぇーよ!
お前、マイアミで絶対やっただろ?!」
「マイアミ・・?あ~あ~・・ハハハハ・・」
「何がおかしいんだよ!?ちゃんと答えろよ!」
いきなり笑い出したつくしにマットが大声を出している
「ハハハハ・・だってあんた・・本当に何も知らなかったんだね?」
「何をだよ!?」
「教えてほしい?」
「さっさと教えろよ!」
「じゃあ、まずそのキーをさっさと総二郎に渡して」
そう言うが早いかつくしはマットの手にあったキーを俺によこした
「答えは簡単よ。私とカイルとじゃ不可能なの。
だってカイルはゲイなんだもん、女には興味ないのよ!」
『ブッーーー!!』
マットが飲んでいたワインを吹き出した
「ちょっと!汚いわよ!
ねぇ、本当に気がついてなかったの?」
「あ、ああ・・」
「ちなみにカイルが好きだったのはあんたよ。
マイアミではあんたを守ってやったつもりだんだけど、
こんな誤解されてるんだったら助けずにさっさと
新しい世界に放り込んでやるんだった」
マットは完全にフリーズしたまま
固まってしまっているマットの脛につくしの蹴りがヒットした
「イッテェーー!」
蹴られた痛みで我に返ったマットにつくしはまたもやニヤリと笑みを零すと
「ちなみに総二郎は知ってたわよ。
・・って言うかみん~な知ってるの、知らなかったのはあんただけね!」
そう言うとつくしは振り返り大きな声で談笑している友人を呼んだ
「ジョージ、リチャード、レイチェル、ジーナにマイケルと・・
総二郎も!あんた達の負けよ!」
「ん?オイ!ケイト、何が負けなんだよ?!」
「賭けてたのよ」
「な、なにを・・?」
「あんたが気付いてるかどうか」
「い、いつから・・?」
「ん~・・5年ぐらい前からかな?」
つくしがマットにそう答えていると
名前を呼ばれたメンバーが続々と集まってくる
それぞれが口々にマットに向かってタメ息を付きながら
"マジかよ?"とか"信じられない・・"
と言いながらつくしにお金を渡している
集まったのは全部で600ドル
1人100ドルづつ賭けてたのか?
600ドルを手にしたつくしはその半分をカイルに渡している
半分の300ドルを手にしたカイルがメイドからワイングラスを
2つ受け取ると一つをつくしに手渡しまず2人で乾杯すると
マットのグラスにも軽くグラスを当てている
「マット、婚約おめでとう。
車を取られたんだってね?いいディーラー紹介しようか?」
「お、おう!サンキュー。
ディーラはいい・・それよりあ、あんま近寄んな!」
『バコッ!』
「イテェーな!なんで殴んだよ!?」
「あんたが失礼な事言うからでしょ!」
「大丈夫だよ、ケイト」
「ダメよ!こいつを甘やかしちゃ!」
「ハハハ・・ケイトは相変わらずマットには厳しいね」
楽しそうに声を上げ笑いながらカイルは
つくしとマットの顔を交互に眺めている
「ところでマット?婚約者は紹介してくれないの?」
「お、おう!紹介する、ちょっと待ってろ!」
マットがつくし達の元から離れたのを合図に俺もカイルに声を掛けた
カイルと合うのは約2年ぶり
当然、類やあきら達は初対面だから紹介していると
マットが滋を連れて戻ってきた
みんなにワインを勧めらるまま飲んでいたらしい滋は
すっかり出来上がっていて・・
普段のハイテンションからさらにワンランクアップした
テンションでカイルとすぐに打ち解けている
しばらくはメンバーが入れ替わり立ち代りで楽しい時間が続いていた
桜子は先ほどから目がランランと輝いていて鼻息も荒い・・
そんな勢いだと逆に男が逃げるぞ!
類はいつもの無表情
まぁ~起きてるだけマシだな・・
あきらも普段と変わらない
次々と声を掛けてくるつくしの友人達と笑顔で会話している
司は・・っと
言うまでもねぇーよな
視線はずーっとつくしを追いかけていて
つくしに近寄ってくる奴を睨んでやがる
オイ!司・・その目・・マジで怖ぇーぞ!
目だけで人殺しそうだわ・・
パーティーは夜遅くまで続き、結局最後まで残ったのはいつものメンバー
マットもあきらも俺もかなりの量の酒を飲んでいて
流石に少し酔いが回ってきている
類はとっくにクッション抱えてソファーで夢の中だし
その横では珍しく桜子もダウンしている
司もかなり飲んでいるはずなのだが見た目は全く変化なし
滋なんてもう問題外で完全な酔っ払い・・
さっきから誰かがちょっと動いただけで大笑いしてやがる
そんな中でメイドに後片付けの指示をしていたつくしも戻ってきて
やっと一息ついている・・
けど・・
なんか微妙~な空気なんだよなぁ~・・
時計は深夜2時を回っている
まず最初に部屋へと引き上げたのがつくしで
「私、そろそろ寝るね。
後は自由にやってて。」
「えぇ~~つくし~!もう寝ちゃうの~?!」
「うん、明日も朝から予定があるから。」
「え~~つまんな~い!もっと飲もうよ~~!!」
「ごめんね、滋さん。
また今度ね。」
つくしはそう言うとソファーで眠ってしまっている桜子と類を
引っ張り起こしリビングを出て行ってしまった
その後は楽しいんだかどうだか?
微妙~な感じのままで気が付くと俺もベッドに倒れこむようにして眠っていた
むっくりと顔を埋めていた枕から顔を上げ時計を確認すると
午後12時を回っている
まだぼんやりとする頭のままでリビングへと入って行くと
誰も居ない・・
みんな出かけたのか?
なんて思いながらコーヒーを淹れリビングの背の低いテーブルの上に置かれていた新聞を手に取った
しばらくするとバッチリと化粧をした桜子が帰ってきた
「西門さん、おはようございます。」
「おう、お前、出かけてたのか?」
「ええ、ランチをいただきに近くのレストランまで。
こちらではシェフも居なければお茶を淹れていただけるメイドも居ないですから。」
・・って
たしかにここは行き届いてるとは言えねぇーけど・・
俺に嫌味を言うなよ!
「他は出かけてんのか?」
「F3の皆さんはお仕事に行かれましたけど、マットと滋さんはお帰りになりましたよ。
先輩も出かけてるみたいです。」
・・・って事は暇なのは俺と桜子だけって事か・・・
けど、今日の俺はこいつの相手してられる程の元気はねぇーな・・
そう思って飲みかけのコーヒーを持って部屋に戻ろうとした俺の背中から
キッチンから水を持って出てきた桜子の声が追いかけてきた
「今晩、また皆さんでディナーをご一緒しましょうって美作さんがおっしゃってましたけど」
「了解!」
短く返事を返すと部屋へ戻りベッドへゴロリと横になると再び睡魔に襲われ目を閉じた・・
目が覚めたのはそれから3時間後
我ながらよく寝たもんだ・・
これじゃあまるで類じゃねぇーか・・?
寝すぎたせいか身体の節々がダルイ
ダルさの残る身体のままベッドから出てリビングへと入って行くと類が戻っていた
今夜は俺と類、桜子の三人であきらに指定されたレストランへと向かった
このレストランは最近NYで話題になっていて
うりはフレンチとエスニックの融合だとか・・
とにかくいつも一杯で予約も数ヶ月先まで取れないらしい
あきらの奴・・どうやってこんなとこの予約を取ったんだ?
入り口であきらの名前を告げると通されたのはぐるりと周囲を
囲むように背の高いソファーが配されているテーブルだった
「よお!早かったな?
「おう!」
テーブルにはすでにあきらにマットと滋そして司の姿もあった
司は記憶が戻ってから明らかに変わった・・
いや変わったというかあの頃に戻っていた
それに今までは仕事が忙しいからという理由で
俺達ともあまり会っていなかったのに
最近では呼び出しにはすぐに応じてくる
それもこれも全てつくしに会いたいがためだろうけど・・・
「総二郎?ケイトは?」
「俺は今日会ってねぇーぞ。」
「先輩なら直接ここに来ると思いますよ。
時間とお店は伝えておきましたから。」
「じゃあ先にやってるか。」
「そーだな。」
その言葉を合図にワインが運ばれてきて和やかな雰囲気で食事が始まっ
食事が始まって10分ほどでつくしが到着した
普段はアップにしてることが多い髪を今日は下ろし
柔らかい空気を纏って現れたつくしは
"遅くなってごめんね"
なんて言いながら俺の隣に座ったがどこかいつもと様子が違っていた
おかしい・・・
いつも変なのだが
今日はどこかぼんやりしているというか・・・
何か考え事をしているみたいだった・・・
話しかけられても上の空で空返事を返してくるだけ
「オイ!ケイト!聞いてんのか?!」
「・・えっ?!・・何?あっ・・ごめん、聞いてなかった」
「ハァ~・・ったくお前はさっきから何ボーっとしてんだよ!?」
「・・ごめん・・ちょっと考え事してたのよ!
で?なんなの?」
「親父さんとお袋さんは元気だったのかって聞いてんだよ!?」
「あっ・・うん、元気だったけど・・
どうして今日、実家に帰ったって分かるの?」
「お前の服装見れば分かるんだよ!」
「そ、そうなの?」
確かにマットの言うとおりだった
つくしは普段、仕事の時はカッチリとしたスーツを
休日などはラフな格好をしている事が多い
友人達と出かける時だって全身ブランド物の
それも新作を身に着けるような事はしていない
だけど今日は上から下までグッチの新作で
身に着けている宝石も明らかに普段とは違う
つくしがこんな格好をする時は大抵、実家に呼ばれた時
「で?親父さんは何の用だったんだ?」
「・・別に・・特に用があったわけじゃないわ。
久しぶりだったからそれだけよ。」
「じゃあなんでそんなボーっとしてんだよ?
仕事でなにかトラぶったのか?」
「なにもトラぶってない。
もういいでしょ?なんでもないからほっといて!」
つくしはそれ以上、話しをしたくないようで彼女にしては珍しく
強い口調で話しを終わらせた
なんとなく気まずい沈黙が降りてくるけどマットは
全く気にしていない様子で話しを続けていく
「お前、日本での式に出れんのか?」
「出席するつもりだけど・・」
つくしがそう答えている時、携帯が鳴り
"ちょっとごめんね"と言い残しテーブルから離れた
5分ほどで戻ってきた彼女は再び席に戻ることは無く
「ごめん!急用が出来たから行かなくちゃいけなの。
本当にごめんね!」
話しながらバッグを手にしたつくしに滋が慌てて椅子から腰を浮かせた
「つくし?仕事?私も行った方がいいよね?」
「大丈夫だよ、滋さん。仕事じゃないから!」
「もう車は呼んだのか?」
「うん、呼んだ。慌しくてごめんね。
後はみんなで楽しんでね」
そう言ってあっさりとレストランを後にしたつくし
この時点で俺達はまだ知らなかった・・・
この日、つくしに何が起こっていたのかを・・

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