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月夜に 49

こんばんは。(#^.^#)
お引っ越しです。🎶
それではどうぞ~✴







あ~胃が痛い‥

数日前から食欲が無く、体調は悪かったけど
此処に来てとうとう胃がキリキリと痛み始めた‥

最悪‥

部屋に入った時から感じる痛いほどの視線の中に雛にそっくりの男性を見つけた

以前、あきらが言っていた言葉を思い出した

”誰が見てもすぐに分かるよ”

本当だった‥

長い睫も鼻筋の通った顔もクセのある髪も雛にそっくり

怒鳴り声を上げた彼に咄嗟にあきらとの結婚を了承したけれど

でも、どうして私の記憶が戻らなければあきらと結婚って事になるんだろう?

あきらには嫌なの?と言ったけど実際、結婚なんて考えた事無かった
今の私には覚えていない雛の父親とやり直す事よりもあきらとの結婚の方が
現実味があるというだけだ


あきらは私の事をどう思っているのだろう?

私はあきらの事をどう思っているのだろう?

あきらは単にお父様の命令だから私との結婚を了承したのだろうか?

だとしたら‥

私は?

ぼんやりとする頭でそんな事を考えているとふいに

”牧野”

と呼ばれた‥

沈黙の中、口火を切ったのは類だった

「牧野、久しぶりだね?」

牧野‥?

私の事よね‥?

そう呼ばれるのってなんだか実感がない

久しぶりって言われてもどう答えればいいのか分からない
彼からには久しぶりでも私にとっては初対面と同じなのだから‥

牧野と呼ばれ戸惑っているとあきらが助け舟を出してくれた

「櫻、彼が類だ」

「花沢さん‥?」

「そう、お前が非常階段でよく一緒にいたのが彼だよ」

「‥じゃぁ、その隣が西門さん?」

「そうだ、それからその隣が司と司の姉ちゃんの椿さんだ」

あきらの言葉に櫻は少しだけ司の方へと視線を動かしたけど
すぐに逸らしてしまった

「‥彼が‥雛の父親なのよね‥?」

「あぁ」

小さく答えたあきらの声に彼女は体を司の方へと向け
消え入りそうな程の小さな声で


「‥ごめんなさい‥私、何も覚えてなくて‥」

「いや、謝らなくていいから、悪いのは俺の方なんだから
お前は何も悪くないから‥
なぁ、雛を連れてNYへ来てくれないか?」

「‥えっ‥?」

驚いたように顔を上げた櫻と初めて視線がぶつかった

「もちろん今すぐにとは言ってねぇ。
 だけど俺はお前とやり直したいと思ってる、だから考えて欲しいんだ俺との事も」

「それは‥雛がいるから?」

「違う!俺が雛の事を知ったのは先週だ。
 俺はその前からずっとお前の事だけを思って生きてきたんだ。
 だから雛の事は関係ねぇ!でも、雛がいるって知って嬉しかった。
 ありがとう、あんなにいい子に育ててくれて」

「ありがとう‥でも、すぐには返事できない‥」

「分かってる、急がねぇーからちゃんと考えてくれ。
 それから、雛に俺が父親だって言ってもいいか?」

父親だって名乗ってもいいか?

確かに彼が本当の父親だろうけど

雛はずっと一緒にいたあきらを本当の父親のように思っている
記憶を取り戻すまでの臨時の父親だと約束していたが
幼い雛がその言葉の意味を理解しているとは思えなかった

だけど‥

いずれ知ることになるなら今がいいチャンスなのかもしれない
それに雛には自分の本当の父親が誰なのか知る権利がある

「そうね‥ちゃんと言わなきゃね‥
 でも‥雛はあきらの事をパパって呼んでるの
 だからあなたの事をすぐには受け入れてくれないかもしれないの‥」

「ああ、分かってるよ」

「ごめんなさい‥
あきら?雛はお父様方と一緒にいるのかしら?」

「多分な、連れてきてやるよ」

「ううん、私も一緒に行く」

二人が雛を連れにリビングから出て行った後

「司、よくがんばったわね!
 あなたにしては上出来よ」

「マジで姉ちゃんの言うとおりだぜ!
 俺はお前がいつ怒鳴り声を上げるかってヒヤヒヤしてたけどよく我慢したな!」

「おめぇーら!俺の事をなんだと思ってんだ?!
俺だってやる時はやるんだよ!‥けどなぁ‥
俺‥やっぱ自信ねぇ‥
今のあいつの中には俺はいねぇ‥あいつが今見てるのはあきらだ‥」

いつになく弱気なことを言う司

「お前なぁ~らしくねぇーことばっか言ってんじゃねぇーよ!
 大丈夫だ!そんな焦んな!」

「あぁ‥」







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kirakira
Posted bykirakira

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