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月夜に 57

おはようございます。(#^.^#)
お引っ越しです。🎶
それではどうぞ~✴







しばらくすると内線が鳴り
あわてた声の秘書が司が来た事を告げているが
受話器を置く前に司が俺のオフィスへ飛び込んできた

「よぉ!」

「牧野は何処だ?!」

挨拶もなしかよ!?

「2つ向こうのオフィスだ」

「わ、分かった」

それだけ言うと司は慌ただしく飛び出していってしまった

まったく、騒々しい奴だ

もう少し、普通に出来ないのか?






牧野のオフィスの前で立ち止まり呼吸を整える
何も考えずにとにかくここまで来てしまったがいざここまで来ると
ドアをノックする手が躊躇してしまう

牧野は俺の話を聞いてくれるだろうか?

夕べからの俺の印象は最悪だろうからな





司と櫻の様子が気になってオフィスを出ると、司はまだドアの前に立っていた

ったく!あいつは何やってんだ?

さっさとノックしろよ!

世話のかかる奴‥


「オイ!司、何やってんだ?さっさと入ればいいだろうが!」

俺は立ち尽くしている司に声をかけながら櫻のオフィスのドアをノックし
少しだけドアを開けて櫻を呼んだ

「櫻?」

デスクに座りデッサンをしていた櫻が顔を上げた

「司が来たから、入れるぞ!」

俺は返事を待たずに司をひっぱり無理矢理オフィスに押し込みドアを閉めた




あきらに引っ張られる形で櫻のオフィスに入ってしまった
後ろでドアが閉まった音が聞こえる


今、俺の目の前にずっと求め続けた女が立っている
駆け寄り抱きしめたい衝動に駆られるけれど

でも、そんな事をしては元も子もないここはグッと気持ちを押さえて

「よ、よぉ!」

つとめて冷静に言ったつもりなのだが声が上ずってしまう

ったく!


何が”よぉ!”だよ!

俺はもっとましな挨拶できねぇのか!?


「‥こんにちは」

少し間を置いて返ってきた声
戸惑っているのが分かる


「さっきは悪かったな。
電話掛けてきてくれたのにいきなり怒鳴ったりして」

櫻は答える代わりに軽く微笑んで首を振った


「今日は朝から機嫌悪くてごめんな」


司が素直に謝っている

こんな珍しい事はない

だけど記憶の無い彼女にはそれが分からない


「あ、あの‥座りませんか?」

「あぁ‥」

とりあえず手近かにあったソファーに腰を降ろすと
櫻は司の前のソファーに座った

微妙な距離

手を伸ばせば触れられる位置にいるのに今はそれが出来ない

「道明寺さんの機嫌が悪かったのって、やっぱり夕べの事が原因?」

「‥そうだな。でも、お前が悪いんじゃないから気にしなくていい
だけど今日、お前が電話掛けてきてくれてすっげーうれしかった。
もう二度と口も聞いてもらえないと思ってたから」


「ごめんなさい‥私、夕べあなたに痛いとこ突かれたの。
今の私はあなたの言うとおり自分じゃ何も決められなくて‥
でも真正面から本当の事言われてついカッとなってあんな事言ったんだと思う
私、あなたの事も他のみんなの事も頭では分かってるの、日本に帰る前から
あきらが少しづつ教えてくれてたし、私も知りたかったからいろいろ聞いたから。
でも、あきらが言った通りだった‥自分で思い出さなきゃ意味が無いって。
あなたが雛の父親だって事も私の事を想ってくれてる事も頭では理解出来てるの、
でも私・・自分の気持ちが分からないの‥」


「まず私自身がどんな人間だったのかが分からなくて‥
夕べだってみんなとどう接していいのかも分からなくて
以前の私はみんなとどんな風に話してたんだろうって‥そんな事ばっかり考えちゃって‥
そしたら何にも分かんなくなってきちゃって無意識のうちにあきらを探してるの」


突然話始めた私の気持ちを彼は辛そうな顔で聞いていた。


「ごめんなさい、こんな話聞きたくないわよね‥?」


「いや、聞かせて欲しい。知りたいんだお前が今何を考えてどう思ってるか
 全部知りたいんだ!だからお前の6年半を教えてくれないか?」










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kirakira
Posted bykirakira

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