月夜に 58
おはようございます。(#^.^#)
お引っ越しです。🎶
それではどうぞ~✴
「記憶が無くなって3ヶ月程は日本に居たの。
熱がひいて体力が少し戻ってきた頃から今度は悪阻が酷くて
一日のほとんどをベッドの中で過ごしててそんな時もあきらはずっと側に居てくれたの。
あの頃の私はどうして記憶が無いのか?どうして妊娠なんてしてるのかって?
そればっかり考えてて昼も夜も一人じゃ不安で、恐くて、眠れなくて‥
パリに行ってからもしばらくはそんな状態だったからあきらは昼間は大学に行って
講義が終わると真っ直ぐに帰ってきて夜は私が眠るまで側から離れないで居てくれて
私が眠ってから大学のレポートだとかやってたみたい。
大分、後になってあの頃は大変だったって言ってたから」
櫻の口からよどみなく出てくるのはあきらの名前だけ
あきらがどうやって彼女を支えてきたのかがよく分かる
くだらない嫉妬だという事はよく分かっている
だけどこれ以上彼女の口からあきらの名前を聞きたくない
「どうして芸大になんか行く事になったんだ?」
「雛がまだ産まれる前からパリでいろいろ写真を撮り始めたの」
「それは聞いたよ」
「そう‥雛が2歳になる頃からお父様方が雛をいろんな所に連れて行ってくださるようになって
自分の時間が持てるようになったの。そしたら雛も居ないしあきらも大学だし一人でする事ないでしょ
だから私も学校に行きたくなって‥高校3年生からやり直して将来はカメラをやりたかったから
高校卒業したら専門学校に進もうと思ってたんだけどどうせなら大学にって思って芸大にしたの」
「仕事しながら通ってるのか?」
「うん、最近は仕事の方が忙しくてちゃんと通えてないけどね。
道明寺さんも学生なの?」
「あぁ、NYで大学院に通ってる。
なぁ?その道明寺さんって呼び方止めてくれないか?」
「でも‥じゃぁ、何て呼べばいいの?」
「司でいいよ」
「そんな‥呼び捨てになんて出来ないよ」
「いいんだ。
そう呼んで欲しいんだ」
「‥分かったわ」
「俺もお前の事、櫻って呼んでもいいか?」
「えぇ、構わないけど‥」
「櫻、俺達もう一度やり直せないか?」
まっすぐ目を見て語りかけてくるその強い瞳に吸い込まれそうになる自分がいる
昔の私もそうだったのだろうか?
強引だけど優しさや思いやりを感じさせるこの人と私はどんな時間を過ごしていたんだろう?
「分からない‥だけど、あなたとちゃんと向き合ってみようと思ってる」
本当に分からない
今の私がもう一度この人を愛するという確証は何もないのに・・
「ありがとう」
「あなたは本当にいいの?
何も覚えていない私と上手くやっていけると思ってる?」
「ああ、思ってる。
記憶なんて関係ねぇ!俺はお前と雛が側にいてくれたらそれでいいんだから」
記憶なんて関係ない、彼はきっぱりと断言したけど本当にそうだろうか?
記憶のない私は彼を傷つけてしまわないのだろうか?
ちょっとした仕草の違いや感じ方の違いがやがて大きな溝となって二人の間に立ちはだかるかもしれないのに‥
軽く頷くと彼は少し安心したような表情になり上着のポケットから小さな箱を取り出した
「お前、これ何だか分かるか?」
手渡された箱はベルベット生地でジュエリーケースみたい
「開けてもいいの?」
「ああ、構わない」
中を開けてみると小さな土星のネックレスが入っていた
「こ、これ‥?」
「!!!覚えてんのか?!」
「これ、私も持ってるの。あきらが私が大切にしてた物だからって渡してくれたの。
でも、どうしてこれをあなたが‥?」
「昔、俺がお前にプレゼントした物で特注品で世界に一つしかなかった。
お前が居なくなってから俺が自分の為に作らせたのがある。
でも、どうしてお前が持ってるんだ?」
そう言って自分の首に掛かっているネックレスを私に見せてくれた
「どういう事?」
「昔、俺とお前は一度別れた事があるんだ
その時、お前は高価な物だからって俺に返してきた。
俺はそれをお前の目の前で川に捨てたんだ‥
お前、本当にこれ持ってるのか?」
「う、うん、持ってる‥けど‥」
「どうして持ってるんだ‥?
まさか!お前‥あの後、川に入って拾ったのか‥?」
「分からない‥でも‥今も持ってるわよ‥」
見覚えのある形をしたネックレス
彼の首に掛かっているのはメンズ物なのか少し大きめの土星がついていて
今、彼が私に手渡したネックレスはチェーンが少し短い
「どうしてお前が持ってるのかは分かんねぇけど
それが大急ぎで作らせた三つ目で今日届いたんだ。
それ雛に渡しといてくれないか?」
「これを雛に‥?」
「そうだ、世界中で俺達しか持っていない」
「ありがとう、でもこれはあなたが直接、雛に渡してあげて。
その方が雛も喜ぶと思うし」
「いいのか?雛に会わせてくれるのか?」
「もちろん、だってあなたは雛のパパでしょ」
「ありがとう」
ありがとうと言って微笑んだ彼
牧野つくしはこの人と一体どんな時間を過ごしていたのだろう?
いつかそれも思い出せる時がくるのだろうか?
「なぁ、メシでも食いに行かないか?」
「‥いいわよ」
OKするとまた彼はホッとしたような表情をした
「ねぇ、いちいちホッとした顔するのやめてくれない?」
「お、俺が、いつそんな顔した‥?
冗談じゃねぇぞ!この俺様がそんな顔するわけねぇーだろ!」
いきなり顔を真っ赤にして慌てたように大きな声を上げた彼に笑ってしまう
それに自分の事を俺様って‥
なにそれ?
「クスクスクス‥」
私が笑っていると彼の額には青筋が立ち始めた
「何笑ってんだよ!」
本当に青筋立てて怒ってる人って初めて見たかも‥
「だって‥」
そう言ってまだ笑ってると彼の顔に今度は笑みが浮かんだ
「お前とこうやって話してるとなんだか昔に帰った気がする」
「私とあなたっていつもこんな風に話してたの?」
「そうだな‥俺はいつでもお前と一緒に居られるだけで幸せだったけど
お前はバイトばっかしててあんまり俺の相手してくれなかったし
お前が最初好きだったのは類だったから俺はいつも不安だったんだ。
まぁ、それは今でもあんま変わんねぇけど、でも俺は今幸せだと思ってる。
またお前に会えたし、雛にも会えたんだからな」
「あのね‥こんな事聞くのはおかしいかもしれないけど
私はあなたの事を愛してたのよね?」
「ああ、俺は愛されてると思ってたけど‥」
「けど‥なに?」
「俺、お前の記憶が無い時、散々ひどい事言って傷つけたからお前に嫌われてたかもしれない。
記憶が戻ったお前の中にはもう俺は居ないかもしれない‥
恐いんだ‥もし、お前が全て思い出した時もう愛してないって言われるのが‥
もうやり直せないっていわれるのが一番恐いんだ」
「だから何も覚えてなくても関係ないって言ったの?」
「違う!いや‥そうかもしれない‥
だけど俺は今のお前とやり直したいんだ」
「そう‥分かったわ」
「俺、今日はまだ仕事が残ってるけど週末絶対空けるから
三人でどっか行かないか?」
「いいけど、あなた本当に大丈夫なの?
無理しないでね」
「無理なんかしてないよ。
俺は少しでもお前と一緒に居たいんだ」
「‥分かった。でも、どこ行くの?」
「雛の行きたい所ってどこだ?」
「‥あの子の行きたい所って言ったら一つしかないけど‥」
「それって何処だ?」
「ディズニーランド‥」
「ディズニーランド?」
「そう、あの子の今のお気に入りはミッキーマウスなの。
毎日、寝ても覚めてもミッキーが居ないとダメなのよ。
日本に帰って来てすぐにお父様方に連れて行っていただいたけど
一度で満足するような子じゃないから‥」
「そうか、分かった」
「本当にいいの?」
「いいって言ってるだろ。何度も言わせるなよ!俺は少しでもお前と雛と一緒に居たいんだよ。
俺はお前と雛の為だったら何でもしてやる!どんな望みだって叶えてやる!」
「ありがとう、でも一つお願いがあるの。
雛のことあまり甘やかさないで欲しいの。
今のあの子は自分のわがままを全部聞いてもらえると思ってて
これ以上特権意識を植え付けたくないからなるべく普通にして。
わがまま言っても聞かないで、ちゃんとしかって欲しいの。」
「‥頑張ってみる」
「お願いね」

応援ありがとうございます。
お引っ越しです。🎶
それではどうぞ~✴
「記憶が無くなって3ヶ月程は日本に居たの。
熱がひいて体力が少し戻ってきた頃から今度は悪阻が酷くて
一日のほとんどをベッドの中で過ごしててそんな時もあきらはずっと側に居てくれたの。
あの頃の私はどうして記憶が無いのか?どうして妊娠なんてしてるのかって?
そればっかり考えてて昼も夜も一人じゃ不安で、恐くて、眠れなくて‥
パリに行ってからもしばらくはそんな状態だったからあきらは昼間は大学に行って
講義が終わると真っ直ぐに帰ってきて夜は私が眠るまで側から離れないで居てくれて
私が眠ってから大学のレポートだとかやってたみたい。
大分、後になってあの頃は大変だったって言ってたから」
櫻の口からよどみなく出てくるのはあきらの名前だけ
あきらがどうやって彼女を支えてきたのかがよく分かる
くだらない嫉妬だという事はよく分かっている
だけどこれ以上彼女の口からあきらの名前を聞きたくない
「どうして芸大になんか行く事になったんだ?」
「雛がまだ産まれる前からパリでいろいろ写真を撮り始めたの」
「それは聞いたよ」
「そう‥雛が2歳になる頃からお父様方が雛をいろんな所に連れて行ってくださるようになって
自分の時間が持てるようになったの。そしたら雛も居ないしあきらも大学だし一人でする事ないでしょ
だから私も学校に行きたくなって‥高校3年生からやり直して将来はカメラをやりたかったから
高校卒業したら専門学校に進もうと思ってたんだけどどうせなら大学にって思って芸大にしたの」
「仕事しながら通ってるのか?」
「うん、最近は仕事の方が忙しくてちゃんと通えてないけどね。
道明寺さんも学生なの?」
「あぁ、NYで大学院に通ってる。
なぁ?その道明寺さんって呼び方止めてくれないか?」
「でも‥じゃぁ、何て呼べばいいの?」
「司でいいよ」
「そんな‥呼び捨てになんて出来ないよ」
「いいんだ。
そう呼んで欲しいんだ」
「‥分かったわ」
「俺もお前の事、櫻って呼んでもいいか?」
「えぇ、構わないけど‥」
「櫻、俺達もう一度やり直せないか?」
まっすぐ目を見て語りかけてくるその強い瞳に吸い込まれそうになる自分がいる
昔の私もそうだったのだろうか?
強引だけど優しさや思いやりを感じさせるこの人と私はどんな時間を過ごしていたんだろう?
「分からない‥だけど、あなたとちゃんと向き合ってみようと思ってる」
本当に分からない
今の私がもう一度この人を愛するという確証は何もないのに・・
「ありがとう」
「あなたは本当にいいの?
何も覚えていない私と上手くやっていけると思ってる?」
「ああ、思ってる。
記憶なんて関係ねぇ!俺はお前と雛が側にいてくれたらそれでいいんだから」
記憶なんて関係ない、彼はきっぱりと断言したけど本当にそうだろうか?
記憶のない私は彼を傷つけてしまわないのだろうか?
ちょっとした仕草の違いや感じ方の違いがやがて大きな溝となって二人の間に立ちはだかるかもしれないのに‥
軽く頷くと彼は少し安心したような表情になり上着のポケットから小さな箱を取り出した
「お前、これ何だか分かるか?」
手渡された箱はベルベット生地でジュエリーケースみたい
「開けてもいいの?」
「ああ、構わない」
中を開けてみると小さな土星のネックレスが入っていた
「こ、これ‥?」
「!!!覚えてんのか?!」
「これ、私も持ってるの。あきらが私が大切にしてた物だからって渡してくれたの。
でも、どうしてこれをあなたが‥?」
「昔、俺がお前にプレゼントした物で特注品で世界に一つしかなかった。
お前が居なくなってから俺が自分の為に作らせたのがある。
でも、どうしてお前が持ってるんだ?」
そう言って自分の首に掛かっているネックレスを私に見せてくれた
「どういう事?」
「昔、俺とお前は一度別れた事があるんだ
その時、お前は高価な物だからって俺に返してきた。
俺はそれをお前の目の前で川に捨てたんだ‥
お前、本当にこれ持ってるのか?」
「う、うん、持ってる‥けど‥」
「どうして持ってるんだ‥?
まさか!お前‥あの後、川に入って拾ったのか‥?」
「分からない‥でも‥今も持ってるわよ‥」
見覚えのある形をしたネックレス
彼の首に掛かっているのはメンズ物なのか少し大きめの土星がついていて
今、彼が私に手渡したネックレスはチェーンが少し短い
「どうしてお前が持ってるのかは分かんねぇけど
それが大急ぎで作らせた三つ目で今日届いたんだ。
それ雛に渡しといてくれないか?」
「これを雛に‥?」
「そうだ、世界中で俺達しか持っていない」
「ありがとう、でもこれはあなたが直接、雛に渡してあげて。
その方が雛も喜ぶと思うし」
「いいのか?雛に会わせてくれるのか?」
「もちろん、だってあなたは雛のパパでしょ」
「ありがとう」
ありがとうと言って微笑んだ彼
牧野つくしはこの人と一体どんな時間を過ごしていたのだろう?
いつかそれも思い出せる時がくるのだろうか?
「なぁ、メシでも食いに行かないか?」
「‥いいわよ」
OKするとまた彼はホッとしたような表情をした
「ねぇ、いちいちホッとした顔するのやめてくれない?」
「お、俺が、いつそんな顔した‥?
冗談じゃねぇぞ!この俺様がそんな顔するわけねぇーだろ!」
いきなり顔を真っ赤にして慌てたように大きな声を上げた彼に笑ってしまう
それに自分の事を俺様って‥
なにそれ?
「クスクスクス‥」
私が笑っていると彼の額には青筋が立ち始めた
「何笑ってんだよ!」
本当に青筋立てて怒ってる人って初めて見たかも‥
「だって‥」
そう言ってまだ笑ってると彼の顔に今度は笑みが浮かんだ
「お前とこうやって話してるとなんだか昔に帰った気がする」
「私とあなたっていつもこんな風に話してたの?」
「そうだな‥俺はいつでもお前と一緒に居られるだけで幸せだったけど
お前はバイトばっかしててあんまり俺の相手してくれなかったし
お前が最初好きだったのは類だったから俺はいつも不安だったんだ。
まぁ、それは今でもあんま変わんねぇけど、でも俺は今幸せだと思ってる。
またお前に会えたし、雛にも会えたんだからな」
「あのね‥こんな事聞くのはおかしいかもしれないけど
私はあなたの事を愛してたのよね?」
「ああ、俺は愛されてると思ってたけど‥」
「けど‥なに?」
「俺、お前の記憶が無い時、散々ひどい事言って傷つけたからお前に嫌われてたかもしれない。
記憶が戻ったお前の中にはもう俺は居ないかもしれない‥
恐いんだ‥もし、お前が全て思い出した時もう愛してないって言われるのが‥
もうやり直せないっていわれるのが一番恐いんだ」
「だから何も覚えてなくても関係ないって言ったの?」
「違う!いや‥そうかもしれない‥
だけど俺は今のお前とやり直したいんだ」
「そう‥分かったわ」
「俺、今日はまだ仕事が残ってるけど週末絶対空けるから
三人でどっか行かないか?」
「いいけど、あなた本当に大丈夫なの?
無理しないでね」
「無理なんかしてないよ。
俺は少しでもお前と一緒に居たいんだ」
「‥分かった。でも、どこ行くの?」
「雛の行きたい所ってどこだ?」
「‥あの子の行きたい所って言ったら一つしかないけど‥」
「それって何処だ?」
「ディズニーランド‥」
「ディズニーランド?」
「そう、あの子の今のお気に入りはミッキーマウスなの。
毎日、寝ても覚めてもミッキーが居ないとダメなのよ。
日本に帰って来てすぐにお父様方に連れて行っていただいたけど
一度で満足するような子じゃないから‥」
「そうか、分かった」
「本当にいいの?」
「いいって言ってるだろ。何度も言わせるなよ!俺は少しでもお前と雛と一緒に居たいんだよ。
俺はお前と雛の為だったら何でもしてやる!どんな望みだって叶えてやる!」
「ありがとう、でも一つお願いがあるの。
雛のことあまり甘やかさないで欲しいの。
今のあの子は自分のわがままを全部聞いてもらえると思ってて
これ以上特権意識を植え付けたくないからなるべく普通にして。
わがまま言っても聞かないで、ちゃんとしかって欲しいの。」
「‥頑張ってみる」
「お願いね」

応援ありがとうございます。
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