モーニングムーン

鍵を開けて部屋に入る

しばらく使っていなかった部屋の空気はまるで今の俺とあいつのように

逃げ場の無いままじっとこの部屋に留まっている

つかの間の逢瀬のためだけの部屋

もう何年も続いている決して誰にも知られてはいけない関係

あいつは親友の妻で俺にも妻がいる

世間でいう不倫の関係

どうして離れられないのだろうか・・？

いや・・はなっから離れる事など考えていない

俺とお前は共犯者なのだから

だけどそれも今夜が最後

俺とお前の最後の夜・・

この関係を始める時にあいつが言った言葉

『いつか私を殺して・・・』

それがお前の望みなら叶えてやる

だけどお前は覚えているのか？

俺の望みを

いつまでも一緒だって

なにがあっても離れない・・

お前のいない人生などなんの意味も無いのだから

だから俺も一緒に逝こう・・・

どこまでも一緒に・・

誰を傷つけたって構わない

誰を悲しませたって構わない

救われる事などなくても構わない

永遠に彷徨い続けることになったとしてもお前と二人なら構わない

もう離れる事など考えなくてもいい世界へ二人で逝こう・・



深く・・・

深く・・・

身体に・・

心に・・・

記憶に・・

意識に・・・


刻み込む彼女の最後の言葉


まだ温かい彼女の身体を抱き寄せるとゆっくりと瞳を閉じた


最後に俺の瞳に写ったのはモーニングムーン


これからは永遠に二人だけの世界で・・・・



　　　　　　　　　　　　～ Fin ～









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