パパはおんぞうし？ 17

なんだここ？

やっぱゆうえんちじゃん！


おっきな き が いっぱいあるし

むし も いっぱいるし

きれいな はなも いっぱい さいてるぞ！

あっ！

いいもん みっけ！

これ すげぇ んだぞ！

これがあると でっけぇ あな ほれるんだぞ！

ちょっと ながくて おもい けど
おれは ちからもち だから
だいじょうぶだぞ！


ん？

あっちは なんだ？


あっ！


いけ だ！


ちいさいけど さかなが いっぱい いるぞ！

あの あかいやつ かっこいいなぁ～

あっ！

あっちのやつは でけぇ～

のぞきこんだら みんな くちを パクパク させて よってくんぞ！

おれと ともだちに なりてぇーのか？

でも おまえらは さかな だから
ともだち には なれねぇーぞ！

だって いっしょに どろけい できねぇだろ？

だから ともだちは むり だけど
けらい に してやってもいいぞ！

きめた！

おい！

おまえらは きょうから れん のけらい だぞ！

さかなが けらい って すっげぇ
かっこよくねぇーか？

そうおもうだろ？

おまえらも おれの けらいになれて うれしいだろ？

おっ！

パクパク してんな！

うれしいんだな！？


おまえら およぐの じょーずだな？！


おれも およぐの とくい だぞ！

いっしょに およぐか？




道明寺家に仕えて早５０年以上

そろそろお迎えが近いと思っておりますが
こればっかりは自分の思い通りにはいかず

旦那様と奥様のご好意でお屋敷に頂いた自室でのんびりと余生を過ごしております

最近ではこのお屋敷を訪れない人が減り
寂しい限りではございますが
時折、帰国なされた椿様が話してくださる
司坊っちゃんのお話しがタマの生きる糧になっているんじゃないかとおります


道明寺家を出られた司坊っちゃん

まさか坊っちゃんがそのような行動に出られるなど
タマは夢にも考えておりませんでしたが
今となっては司坊っちゃんの英断だったと思っております

離れてしまいましたがタマはいつまでも司坊っちゃんの味方でございます

歳のせいか最近は特に司坊っちゃんとつくしの事を考える時間が増えていて
最後に一目だけでも会いたいと思うようになりました

おや？

なんだか庭の方が騒がし

ここは使用人の居住スペースになっていて
庭の管理はされてはいるけれど
庭師にしてもそう頻繁には入ってはこない場所

タマの部屋の前には旦那様がタマの為に作ってくださった池があるけれど
朝夕にタマが池の鯉に餌をあげるぐらいで
今日は誰もこちらに足を踏み入れる予定はなかったはずなのに

なにやらバシャバシャと水音と共に
話し声も聞こえてくる

よいしょっと‥

横になっていたベッドから降り
庭に続く襖を開けてびっくり


小さな男の子が一人

池の中にいた


「おやま！坊やどこから来たんだい？！」


「ん？」


池の中から姿を現した男の子の胸元には鯉

鯉を抱えたまま立ち上がりこちらを見ている男の子に見覚えがあった


「おやま！もしかして蓮坊っちゃまかい？」


「ん？おれは れん だけど
ばあちゃん だれだ？
なんで おれの なまえ しってんだ？」


「わたしは タマだよ。
ここで使用人頭をしてるんだよ」


「しようにんかしら？って なんだ？
それ うまい のか？」


「食べる物じゃないよ！」

「な～んだ！
くえねぇのか？！つまんねぇ！」


「ところで坊っちゃんはそこで何をやってんだい？」


「こいつらを おれの けらいに してやったんだ！
だから こいつらに およぎかた おしえて やってんだ！
れんは スイミングに かよってるから
およぐのが とくい なんだぞ！」


「そうかい、でもそろそろ上がってきた方がいいんじゃないかい？」


「おれ まだまだ およげるぞ！」


「坊っちゃんはそうでも
そっちの家来さん達はそろそろお腹が空いた頃だと思うよ。
坊っちゃんはお腹空いてないかい？」


「れんは さっき じいちゃんに とくべつな チョコパイ もらったから だいじょうぶだぞ！
でも こいつら はら へってんのか？」


「あぁ、減ってるよ。
だからその抱えてる子を離してやってくれないかい？」


「そっか、じゃあ また こんどな！」

そう言って胸元に抱えたままだった鯉を離してやった蓮坊っちゃんが
池から上がる為に池の縁に手を掛けた時
懐かしい声が聞こえてきた




クソッ！


どこ行きやがった？！


問題児を探して屋敷の裏手まで来たが
肝心な奴の姿が見えない


「蓮！どこだ？
返事しろ！」





少しずつ近づいてくる懐かしい司坊っちゃんの声


「とーちゃん！れんは ここ だぞ～！」


蓮坊っちゃんの呼び掛けに池の向こう側から姿を現したのは
懐かしい司坊っちゃん


まず司坊っちゃんはタマの姿を見て
少し照れたような笑みを浮かべられた後
すぐに池の中にいる蓮坊っちゃんの姿を確認して
大きくため息をつかれた


「よっ、タマ、久しぶりだな」


「えぇ、久しぶりでございますね、司坊っちゃま」


「坊っちゃまは止めろよ」


「タマにとっては司様も蓮様もみんな坊っちゃまですよ」


「そうだったな‥まぁ、元気そうで良かった。
蓮が迷惑掛けたな！」


「いえいえ、流石、司坊っちゃんとつくしのお子様だけあって
物怖じせず規格外で‥
タマは嬉しゅうございます」


「おぅ！」

少し嬉しそうにそう答えられた司坊っちゃまは
池の中の蓮坊っちゃまに視線を移され


「こら！蓮！勝手にうろうろすんな！」


「とーちゃん、おれを さがしに きたのか？」


「そうだよ！」



「なんでだ？
おれは あそんでた だけだぞ？」

「だからいつも勝手に行くなって言ってんだろ？！
ほら！さっさと上がってこい！
ったく！なんでいつも填まんだよ？！」

池の縁に立ち蓮坊っちまに手を差し出された司坊っちゃまは
そのまま濡れるのも気にせず蓮坊っちゃまを
池の中から助け出し抱き上げたまま
タマの方へと来られた

「はまって ねぇーぞ！
けらいたちに およぎかたおしえてやってただけだぞ！」

「家来ってなんだよ？」

「いけのなかに いた あいつらを れんの けらいに してやったんだ！
すげぇだろ？！」

「あぁ、すげぇな。
鯉を家来になんて‥お前ぐらいだ‥
また母ちゃんにおやつ抜きって言われんぞ！
おぃ、タマ！タオル貸してくれ！」


「はいはい、少々お待ち下さい」


「とーちゃん！ヤバいぞ！
また かあちゃんが れんの チョコパイ くっちまう！」


「あぁ、くっちまうな！」


「ダメだぞ！
とーちゃん、たすけろよ！」


「こんなずぶ濡れでどうやって助けんだよ？！」


司坊っちゃまに手渡したバスタオル

目の前ではそのバスタオルで蓮坊っちゃまの身体を拭いてやりながら会話するお二人


あの何から何までをメイド任せだった司坊っちゃまが
ご自分で子供を拭いてさしあげている所を見れるなんて
タマは長生きしたかいがありました








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