山口香の社長案件 5

「あんたね！いつも情報量が少なすぎんのよ！」


「一をもって十を知るですよ。
鈍っているんじゃないですか？」


朝イチからキッーー！ってなる

7時ジャスト

まるで計ったようにス～っと目の前に停止した車に乗り込んですぐ
挨拶もそこそこに西田に噛みついたあたしに対して
いつもと変わらない西田

「よく眠れましたか？
睡眠不足はお肌に大敵ですよ」

「誰かさんのお陰で睡眠不足です。
出来ればもう少し有意義な情報を教えて欲しいんだけど」

「まるで私のせいみたいな言い方ですね？」

「あんたのせいでしょーが！」

「それは申し訳ありませんでしたね。
それでは鈍っているあなたにも分かるように説明しますね」


「・・・・・・ねぇ？一発殴っていい？」

「それは遠慮しておきます。
今から説明しますからとりあえず
その手は下ろしていただけますか」

「まず今からフロリダに向かいます」

「・・・フロリダ？！」

「はい、フロリダです。
よろしいですね？」

「・・・・・・・よろしくはないけど
選択肢はないんでしょ？」

「はい、ありません」

「で、あんたとフロリダでなにすんのよ？」

「司様と牧野様が現在バハマに向かわれております。
お二人は年末年始をバハマの島で過ごされる予定になっております」

「予定って・・・どうせ牧野ちゃんは何も知らないんでしょ？」

「なかなか鋭いですね」

「一をもって十を知るですから」

「少し勘が戻ってきましたね」

「それはどうも」

「ではこれ以上の説明は必要ありませんね」

「はい、お手数をおかけしました」

「いいえ」




勘がとかの問題じゃないと思うんだけど
とにかくそれ以上の説明は無しで
西田はタブレットを開き仕事を始めてしまった

ここからは洞察力と推理力
そして経験がものをいう

車は高速に乗った

行き先は恐らく成田

民間のラインでフロリダまで

恐らくＬＡでトランジットしてフロリダ

言わずと知れた全米だけではなく
世界有数の観光地

面積は全米で22位だけど海岸線が約1,900キロもあり
別名サンシャインステート(日光の州)とも呼ばれているリゾート地

州都はタラハシーだけどジャクソンビルやマイアミ、タンパ、オーランドと言った都市の方が
ピンとくる人が多いんじゃないかしら

二人がバハマにいるって事は私達の行き先はマイアミ

マイアミはフロリダ半島の一番下辺りで
カリブ海クルーズの玄関口

確かメープルもあったはず

そこで年末年始をバハマで過ごしている二人の不測の事態に備えて待機ってわけね・・・

ってことは・・

私は年末年始を世界有数のリゾート地で
アンドロイドと二人で何をするわけでもなく
待機してるってわけね・・・

この盆も正月もない感じ久々だわ

ＮＹで秘書をしていた時はこんな感じだった

盆も正月もって以前に土日も関係無しで
常に何時でもすぐ動けるように
神経を張りつめていた

あの時よりはマシだけど・・・

西田と二人でフロリダでどうやって時間を潰そうかしら？なんて考えていた

まぁ、とにかく行き先は分かったんだから
後は約２０時間飛行機に乗っていれば
勝手に連れて行ってくれる

まずは機内で睡眠不足の解消

だって睡眠不足はお肌に大敵でしょ


降り立ったマイアミ国際空港はピーカン

最低気温が０℃近い真冬の東京から
常夏のリゾート地マイアミって振り幅が大きすぎて身体がびっくりしている

それに一応大急ぎで準備したトランクに詰めてきた衣類は全て長袖

年中スーツ姿で汗一つかかないアンドロイド西田はいいだろうけど
私は無理だからとりあえず着る物を調達する

本当なら市内の安い量販店でTシャツに短パンにサンダルに麦わら帽子にサングラスってとこなんだけど
今回はそうはいかないからホテルのブティックでスーツやらワンピースやらを数着買った

余計な出費だわ・・・

メープルのブティックで洋服なんて・・・

高いのよ！

後で西田に経費で請求してやる！









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