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月夜に 68

おはようございます。🎵
お引っ越しです。🎶
それではどうぞ~✴











パークを出ると西門さん達は気を利かせてか彼の鋭い視線に堪えかねたのか
そのまま帰って行ってしまった

再び三人になった私達は彼に連れられて道明寺邸へ

帰りの車に乗った途端に眠ってしまった雛も目を覚まし
広いダイニングで豪華なディナーの後
彼は土星を見せてやると言って望遠鏡を持ち出してきた

かなりの時間を費やしてやっと土星を見つけ出した彼は雛に望遠鏡をのぞかせている

楽しそうに望遠鏡を覗き込んでいる二人の背中をぼんやりと眺めていると
不意に彼が振り返り目が合ってしまった

目が合った彼は優しく微笑むと私の方へと歩いてくる

目の前に立ち止まった彼を見上げてると

「お前、昔、この部屋に住んでた事があるんだぞ」

どういう事・・?

疑問が顔に出ていたのだろうか?
彼はフッと軽く笑うと言葉を続けた

「お前、住むとこなくて一時期ここで住み込みでメイドしてたことがあったんだ。
 俺専属のメイドだったんだけどな・・その時、使ってたのがこの部屋だ」

「・・そ、そうなの?
 ねぇ、もしかして・・その時も土星見せてくれたの?」

「あぁ」

彼の言葉を聞いて部屋中を見渡してみるけど
特に変わったところは何もない

しいて言えば・・

この豪華なお屋敷の中ではシンプルかも

「・・ねぇ、私も土星、見てもいい?」

「あぁ、いいぞ!」

望遠鏡を覗き込むと真ん中にぽっかりと浮かんで見える小さな土星

確かにネックレスみたいな大きさ

パリに置いてきたあのネックレス・・

私の持ち物の中で唯一、美作櫻と牧野つくしを繋ぐ物

記憶を探して幾度と無くながめていたあのネックレスを牧野つくしは
どんな気持ちで持っていたのだろう?

土星を見ながらそんな事を考えていると背後に気配を感じて振りかえると
ゆっくりと近付いてきた長い腕に引き寄せられて彼の胸の中へ

驚きで一瞬身体が固くなる

だけど・・吸い込んだ彼のコロンの香りが私の警戒心を溶かしていく

なぜか懐かしい感じがして顔を上げると

彼の長くて綺麗な指先が私の頬を撫でながら口唇へと降りてくる

怖いくらいにまっすぐに見つめられる瞳から目が逸らせないでいると
彼の指が私の顎に掛かった

スローモーションのようにゆっくりと近づいてくる彼の顔
長い睫に鼻筋の通った端正な顔つきに思わず見とれてしまう

彼の口唇が私のそれに触れそうになった瞬間
下から雛の声が聞こえてきた

「ママ~~」

雛の声に我に返り慌てて彼を突き飛ばしてしまった

「ご、ごめんなさい!」

「はぁ~いいよ。
 俺は急がねぇーしそれにお預けくらうのにも慣れてるからよ!」

「そ、そうなの・・?」

「そーなんだよ!それより雛はいいのか?」

「あっ!そうだった!
 ど、どうしたの?雛?」

慌てて振り返り雛の目線までしゃがみ込むと

「ママ~ねむい・・」

眠そうに目を擦っている雛

「じゃあ、そろそろ帰ろっか?」

「・・う・・ん・・」

もう返事もままならない雛を彼が抱き上げてくれた

「送ってく」

そう短く言うと空いていた左手で私の手を掴んで歩き始めた










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kirakira
Posted bykirakira

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