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チルチル牧野 前編

こんばんは😃🌃
本日は短編です。🎶
タイトルは『チルチル牧野』です。💕
少し長いので前後編に分けました。😆
それではどうぞ~✴















オフィスの窓の外に広がるのは昨日までの雨が
嘘のように抜けるような青い空

今日は七夕らしい

七夕なんて全く興味ねぇけど
夕べ電話越しで話していた牧野の声が疲れた脳に心地良く響いて
“明日は晴れの予報だから彦星様と乙姫様も会えるね”
なんて話す牧野の声を聞きながらいつの間にか眠ってしまっていた

四年の遠距離を経て帰国して三年
足掛け七年の付き合いになる俺達

日本支社に専務として勤務するようになって
相変わらずケンカはするけれどそれなりに仲良くやっている

今はこのそれなりにってのが俺にとってかなりの弊害になっている

一秒でも早く結婚したい俺に対し
牧野はまだ学生だからと突っぱね
大学を卒業したらしたで一度ぐらいちゃんと社会に出て働きたいと突っぱねやがった

ならば働くなら道明寺で結婚を待つ代わりに婚約して一緒に住む事を迫った俺に
その条件を呑む代わりに付き合っていることは内緒で
結婚するまでは一人暮らしするって条件を突き付けてきやがった

なんだよ内緒って?!

“俺と付き合ってるって知られたら
困ることでもあんのかよ!?”
と怒る俺に“大アリよ!”と速攻で返してきた牧野

結局、牧野に弱い俺が折れ

婚約して同棲なしの付き合っていることは内緒で落ち着いて現在に至る

相変わらず忙しく思うように会えないし
相変わらずの類との距離感に苛ついたりもするが
それでも会いたくなればすぐに会いに行ける距離にいる今は
あの頃に比べれば精神的に数段楽で心身共に充実はしているが
それでも三日あいつに触れられねぇと禁断症状が出てくる

今の俺が正にその状態で
あいつに会ったのは先週
久々にあいつらと集まって飲んでいた時で

その時も
また男と別れたとかでハイペースで酔っぱらいの道へと突き進んでいた滋が言っていた言葉

チル(Cill)

あきら達に絡みながら意味不明な言葉を連呼していた滋

数ヶ月単位で付き合う相手が変わっている滋なんてほっとけ!と思っているが
“運命の相手だと思ったのに〜!”とやけ酒を煽る滋を真剣に慰めていた牧野

確かその時にチルとは“のんびり”だとか“まったり“だとか”癒やし“だとかを指すネットスラングで
最近、若い奴らの間でSNSだとかでバズっている言葉だと言っていた

正に今の俺にピッタリな言葉だろ?

俺にはチルが必要だ

そして俺のチルは牧野

な?チルが必要だろ?

時計を見るとちょうど12時

俺のチルは相変わらず倹約家で
毎日、弁当を自分のデスクで食べている

そして俺にも休息が必要だ!

そう思うだろ?

思い立ったらで西田が俺の昼飯用にと
メープルから取り寄せた弁当を手にオフィスを出た

俺のオフィスは36階にあり
牧野がいる総務部は24階

直通の重役用エレベーターではなく
一般用エレベーターを待っていると
オフィスから弁当を手に飛び出してきた俺を見て西田が追い掛けてきた

「専務、どちらに?」

「ちょっとチルってくる!」

そう言った俺にいつもの無表情に少しだけ戸惑いの感情を乗せた声で

「・・チル・・とはどういった意味でございますか?」

「お前、チルも知らねぇのか?
遅れてんぞ!」

「それは申し訳ございません。
後学の為にお教えいただければありがたいのですが」

「チルってのは癒やしだ!」

「・・癒やしでございますか?」

「あぁ、癒やしだ!
おっ!手に持ってんのはなんだ?」

「こちらは先程お見えになりました
高城商事の谷口部長からいただきました手土産でございます。
中身はチョコレートのようですので
牧野様にお渡ししようかと考えておりました」

西田が手にしていた紙袋には
あいつが好きな洋菓子店のロゴが書かれて
中身はあいつの大好きなチョコレート

「俺が渡しといてやる!」

そう言って西田の手から紙袋を奪い取り
ちょうど到着したエレベーターに乗り込むと
一緒に乗り込んでこようとする西田を押し返し扉を締めた

閉まりかける扉の向こうで西田がなんか言ってたが
無視したままエレベーターはゆっくりと降下し始めた

牧野がいる24階に到着すると
ちょうどお昼時でエレベーターの前にはランチに出かけようとしていた奴でかなり混雑していた

そんな中、エレベーターから降りてきた俺を見て
口を開けたままポカンとしている奴や
驚いて後ろへ飛び退いている奴や
悲鳴を上げている奴やら色々

そんな奴らを横目に
歩を進める俺に対し前から来る奴らみな一様に驚き飛び退き
道を開けるように壁へとへばりつき珍しいもんでも見るよう表情を浮かべやがる

それら全てを無視して牧野の元へと向かう

フロアーの入口であいつの姿を探すがいない

どこ行きやがった?!

あいつの居場所を確認しようとスマホを取り出そうとした瞬間背後から小さく

「・・ゲッ」

と言うあいつの声が聞こえてきて振り向くと
マグカップを手に持った牧野が立っていた

「よっ!」

「・・・・よっ・よぉ・・?」

声を掛けた俺に対し思いっきり腰が引けて一歩後退りしている牧野に構わず近付き

「お前、昼飯食ったか?」

「えっ?・・!ちょ!どうみ!!せ、専務・・!」

「どっちだ?食ったのか?」

「えっ・・・あっ・・ま、まだ・・ですが・・?」

「良かった、じゃあ一緒に食おうぜ!」

笑顔でそう言った俺に対し仰け反りでっけぇ目を更に見開いたまま
首をブンブンと横に振っている牧野に構わず
腕を掴みあいつのデスクまで引っ張って行った

「へっ?!・・い、一緒に?!って!
ちょ、ちょっと!どっ・・!せ、専務!」

「今は専務じゃねぇーよ!
いつもみたいに呼べよ」

焦ってテンパりまくっているあいつの耳元に顔を寄せ
そう囁くと真っ赤になる俺のチルチル牧野

フロアーでは俺の出現にみな動きを止め
俺と牧野を見ている

「ほら!さっさと座れ!」

シーンと静まり返るフロアー
動いているのは俺と牧野だけ

そんな中、牧野のデスクの椅子を引き座らせると
俺も隣のデスクにあった椅子に腰を下ろした

「ちょ、ちょっと!なんなのよ?!」

牧野は周囲に聞こえないように声を潜め話しているが
静まり返っているフロアーじゃあまり意味が無い

「普通に話せよ!」

「そ、そんなこと出来るわけないでしょ!
もぅ!なんなのよ?!」

「俺はお前と昼飯食おうと思っただけだ!」

「な、なんで?」

「理由なんてねぇーよ!
とにかくさっさとお前の弁当よこせ!」

「えっ?・・・や、やだ!」

「いいからよこせって!」

俺に取られまいと自分の弁当箱を抱え込んだ胸元から
強引に弁当箱を引き抜くと牧野には
西田がメープルから俺の昼飯にと取り寄せた弁当を手渡した

「ほら!お前のはこっちだ!
それからデザートもあるぞ!
お前、ここのチョコレート好きだろ?」

「へっ?・・・う、うん・・あ、ありがとう・・・
ん?・・・って!そうじゃなくて!!」

「いいからさっさと食えよ!
ほら!昼休み終わっちまうぞ!」

とりあえずは隣に座っているが
腰が引けまくりの牧野に構わず牧野の弁当を食べ始めた俺

そんな俺を睨んだままの牧野










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kirakira
Posted bykirakira

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