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チルチル牧野 後編

こんばんは。🎵
少し長いので前後編に分けました。🎶
それではどうぞ~✴















こいつの弁当の中身は相変わらずで
高等部の頃からあまり変わっていない

だけど俺はその変わらない味に安心して箸が進む

そんな俺を見て牧野は

「あんた、お腹空いてたんじゃないの?
それで足りる?こっち食べた方が良くない?」

なんて俺が牧野に手渡した弁当を指しながら言ってやがる

相変わらず分かってねぇ女だ

「別に腹なんて減ってねぇーよ!
お前の作ったもんは無条件に食えんだよ!
お前もさっさと食えよ!」

「・・・ん・・うん・・
た、食べるけど・・って!
そうじゃなくて!なんであんたがここで一緒に食べてんのよ!
それに約束は?約束したよね?!」

「あぁ、したな。
それがどうかしたか?」

「どうかしたか?じゃないわよ!?」

「俺は別に約束破ってねぇぞ!
現に俺は何も言ってねぇ!」

俺と牧野の関係を内緒にする

婚約した時に確かに約束したけれど
今だって俺は一言も確信に触れるような言葉は言っていない

ただ態度で示しているだけだ!

「いっ・・い、言ってはないけど・・」

「今は昼休みだろ?」

「・・う、うん・・」

「俺にだって昼休みは必要だろ?」

「・・う、うん・・ん?」

疑問形で返してきた牧野

「必要なんだよ!
で、昼休みぐらい俺の好きにしてもいいと思わねぇか?」

「・・ん・・思う・けど・・」

「だろ?
だから俺は今、チルってるんだ」

「・・チルってる?・・ってなに?」

「先週、滋が言ってただろ?」

「し、滋さんが?」

「お前も聞いてただろーが!
チルって癒やしって意味で今バズってるネットスラングだって!」

「・・そ、そうだっけ?
言ってたっけ?」

「言ってたよ!」

「で、それがこれとどう関係あるわけ?!」

「俺の癒やしはお前だろ!
お前は俺のチルなんだから疲れた俺を癒やすのはお前ってことで
俺は今、チルってる。分かったか?!」

「・・・ん?・・・・分か・・んない・・?」

俺の言葉に眉間に深い皴を寄せている牧野の口に
食べかけの玉子焼きを入れてやると
周囲から悲鳴が上がった

「/////////////////・・・ウッ!ギャ!」

周囲から上がった悲鳴に慌てて口元を押さえ
意味不明な言葉を吐く牧野には構わず進める

「お前、明日っから俺がオフィスに居る時は
俺の分も弁当作って持ってこいよ」

「・・えっ・・・と・・
や、やだよ・・!」

「んでだよ?!」

「・・だ、だって・・秘書室のお姉さん達・・怖いもん!
そ、それに一社員が専務にお弁当って・・おかしいじゃん!」

「おかしくねぇーよ!」

「いやいや!おかしいって!」

手を横に振りながら呆れたように笑う牧野にムカついたから

「だったら婚約者として持って来いよ!」

と大きめの声で言ってやった

途端、フロアー中に響いた悲鳴

当の牧野は振っていた手をそのままに固まってやがる

「・・・・・・・・・」

「オイ!なんとか言えよ!」

「・・・えっ?・・えーーー!
う、うそ!?やだやだ!!
あんた約束は?!言わないって約束だったでしょ?!」

「そんなもんとっくに時効だ!」

「じ、時効って・・」

そんなもん時効だ!

いつまでも俺が黙ってるわけねぇーだろーが!

そもそもがどんだけ待たせんだよ?!

先週だって集まりに俺がちょっと遅れたすきに
類とイチャイチャしやがって!

何が類だよ?!だ!!

類だぞ?!

類だよ?とか言うな!

類だって男なんだよ!

お前が好きだった男なんだぞ!

なに俺に内緒で二人でメシ食いに行く約束とかしてんだよ?!

俺が気付かねぇーと思ったか?!

なにが類は何が食べたい?だよ!

そんなの俺に聞けっつーの!

お前は誰と付き合ってんだよ?!

俺だぞ!

俺はお前の婚約者なんだぞ!

お前は俺のチルなんだぞ!

当然、お前のチルは俺だろ?!

「お前のチルは俺だろ?」

そう聞いた俺に対し

「・・・あんたのどこに癒やしの要素があるわけ?」

と可愛くない言葉を吐くチルチル牧野

ムカつくけれどそろそろ時間切れだ
フロアーの入口に西田の姿が見えた

「癒やされまくりだろーが!」

そう言いながら立ち上がると隣に座っていた牧野の腕を掴み立ち上がらせた

「ちょ、ちょっと!なんなのよ?!」

強引に立ち上がらせた俺に文句を言っている牧野に構わずに
そのまま牧野の腰を掴み持ち上げる

「うわっ!ギャッ!」

「うるせぇ!暴れんな!」

肩に担いだ牧野が叫びながら足をバタつかせているのを押さえながら
西田の方へと歩き始める

「専務、そろそろお時間でございます」

「おぅ」

「ちょっと!おぅ!じゃないわよ!
下ろしなさいよ!」

「危ないから暴れんなって!」

「あ、暴れないから下ろしてってば!」

「ウソつくな!」

「ウソつきはあんたでしょ!」

「俺はウソなんてついてねぇ!
とにかく時間がねぇから行くぞ!」

「行くって・・・どこ行くのよ!」

「俺は今からNYだ!」

「あ、あたしは関係ないでしょ?!
下ろしてよ!」

「お前も行くんだよ!」

「イ、イヤだ!
あたしは行きたくない!」

「これからは俺が行く所にはお前も行くんだよ!」

「勝手に決めないで!」

「うるせぇな!
耳元で叫ぶな!」

「あ、あたし今日は約束があるからダメだってば!」

「類との約束なんかキャンセルだ!」

そう言うと動きを止めたチルチル牧野

「・・・か、勝手にキャンセルしないでよ!」

「そもそも類なんかと約束してんじゃねぇーよ!」

「どうしてよ!?類は友達でしょ?
友達と食事に行ってなにが悪いのよ!?」

「なにが友達でしょ?だ!
そもそもがお前は警戒心が無さすぎなんだよ!
とにかくお前は今から俺とNYだ!」

「イヤだぁ〜!
あっ!チョコレート忘れた!取りに戻って!」

「しょーがねぇーな!」

ここにきてチョコレートを忘れていなかった牧野に従い
牧野を担いだままデスクまで戻ると

「あっ!お弁当も!」

「分かってるよ!」

片腕で牧野を担ぎもう片方の手でまだ全然手をつけていない俺が
牧野に渡した弁当とチョコレートの箱を取り
西田が待たせていたエレベーターに乗り込んだ

降下中のエレベーター内でも下ろせとうるさい牧野をそのままに
ビル前に待機していたリムジンに牧野を放り込む

当初の目的とは違い勢いとはいえ
牧野の恋人が俺だってことが社内中に広まったはず
これで社内で牧野にちょっかい出そうなんてフザけた野郎は出てこねぇだろう

リムジンに放り込んだ途端自由になった手足で
俺を殴る蹴るしてくる牧野の攻撃を交わしながら
動きを封じ込めるように抱き寄せる

「なぁ、癒やされるだろ?」

腕の中の牧野は“なに言ってんの?”だとか
“バカじゃないの?!”だとかゴチャゴチャうるせぇけど
三日ぶりにこいつに触れて俺のチル最高!






~fin~






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kirakira
Posted bykirakira

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